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『10BASE-T1Sが自動車通信用イーサネット・リンクに必要とされる理由』――アナログ・デバイセズからホワイトペーパーを進呈!
10BASE-T1Sイーサネットは新しいアーキテクチャの導入をどのようにサポートし、実現するのか?自動車の電気/電子(E/E)アーキテクチャ の変化を決定付ける自動車産業の傾向とともに解説します。自動車産業における10BASE-T1Sの用途は広く、様々なセンサーやアクチュエータを使用することで、車体、快適性、インフォテイメント、そして目下議論されているADASなどの領域において、多くの機能を実現することができます。
このカタログについて
ドキュメント名 | IEEEオートモーティブ・イーサネットの最新規格のひとつ「10BASE-T1Sイーサネット」とは? |
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ドキュメント種別 | ホワイトペーパー |
ファイルサイズ | 1.4Mb |
取り扱い企業 | アナログ・デバイセズ株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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Thought Leadership Article
10BASE-T1Sが
自動車通信用
イーサネット・リンクに
必要とされる理由
著者:Fionn Hurley、 マーケティング・マネージャ
概要 OEMは優れた技術的ソリューションの実現を重視する一方で、
新しいIEEEオートモーティブ・イーサネット規格が次々と出現 車両のパーソナライゼーション、サービスの販売、無線(OTA)
していますが、その最新規格の1つが10BASE-T1Sイーサネッ アップグレードなどの機能を通じて、新たな販売後収益の流れを
トです。本稿では、自動車の電気/電子(E/E)アーキテクチャ 加えることができます。業界は、ゾーン・アーキテクチャと呼ば
の変化を決定付ける自動車産業の傾向について述べ、新しい れる共通の新しいアーキテクチャの方向に進みつつあり、他産業、
10BASE-T1S規格がこの新しいアーキテクチャの導入をどのよ とりわけIT分野の技術や事例を利用することに目を向けていま
うにサポートし、実現するのかを解説します。 す。その結果、今や自動車は、実質的に車輪の付いたコンピュー
タになろうとしています。
新たな機会を提供するメガトレンド ドメインベース・アーキテクチャが機能によって接続を決定して
現在、自動車産業は最も革命的な時代の1つを経験しています。 いたのと異なり、ゾーン・アーキテクチャは物理的な位置によっ
自動車メーカーは、パーソナライゼーション、電化、自律化、ネッ て接続を決定します。この変更は、車両に搭載する電子制御ユ
トワーク化といったいくつかの重要なメガトレンドに対するソ ニット(ECU)の数を大幅に減らし、最大で1km1のハーネス配
リューションを早急に提供する必要に迫られています。OEMは、 線を不要にします。さらに、このアーキテクチャはハードウェア
新たな機能に対応するために、E/Eアーキテクチャを大幅に変更 とソフトウェアを分離して、サービス指向アーキテクチャ(SOA)
する必要に迫られるでしょう。この大変革には難しい技術的課題 を提供します。多くのOEMが、プラットフォームの統合化を容
が伴いますが、OEMにとっては、E/Eアーキテクチャをドメイ 易にして、より機能横断的な能力を実現するエンドtoエンド・ソ
ンベースのソリューションから脱却させることを考える機会でも リューションを提供することを目標に、ソフトウェアを自社のも
あります。ドメインベースのソリューションは、幾世代ものプラッ のとするための多大な投資を行っています2。このスケーラブル
トフォームに繰り返し行われてきたアドオンによって、扱いにく なソフトウェア・プラットフォームのアプローチは、変動要素を
いものになっています。この大幅なアーキテクチャ変更により、 最小限に抑え、新たな収益への流れを作る機会を提供して、長期
Rear Middle Front
100/1000/2500... Left Zone Left Zone Left Zone
Mbps Ethernet
10BASE-T1S Super
Ethernet Computer
Sensor and
Actuators Rear Middle Front
Right Zone Right Zone Right Zone
図1. 自動車のゾーン・アーキテクチャ
VISIT ANALOG.COM/JP
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的な研究開発投資削減への道を開くと共に、複数の車種に対応し X 既存技術(例えばCAN(FD)など)よりも高速の通信
ながら開発時間を短縮します。 X FlexRayのような従来型車載ネットワーキング技術に代わる
これらの革命的なアーキテクチャの変化には多くの課題が伴い、 後継技術
多くのOEMは、全体的な組織構造を変革して、個々のグループ X ECU用としてはコスト効率やエネルギー効率があま良くない
が特定分野の機能だけを提供するという体制を廃し、より統合化 100BASE-T1の代替技術
された機能横断的な組織へと移行することを強いられました。 X 単純な冗長センサー回路の接続に対応できる能力
自動車産業は急速にイーサネット・デバイスの主要な消費者とな
りつつあり、自動車へのイーサネット導入の広範な展開は、これ 10BASE-T1Sとは
らの新しいアーキテクチャの導入を成功させる重要な柱の1つと 10BASE-T1S仕様は、2020年2月に発表されたIEEE 802.3cg
見なされています。イーサネットは、必要なスケーラビリティを 規格の一部として策定されました。10BASE-T1Sは、オートモー
提供して複数の速度グレードをサポートする、実績と信頼性を備 ティブ・イーサネット・エコシステムに欠けていた機能を提供し
えた伝送媒体であり、サービスベースのアーキテクチャをサポー て真のイーサネット–エッジ間接続を可能にし、ゾーン・アーキ
トすると共に、成熟した安全およびセキュリティ用のビルディン テクチャのニーズに対応します。
グ・ブロックを備えています。イーサネットは明確に定義され十 他のオートモーティブ・イーサネット技術と異なる10BASE-T1S
分に理解されたOSIモデルであり、複雑な自動車用ネットワーク の画期的かつユニークな側面は、マルチドロップ・トポロジをサ
全体の管理を容易にします。 ポートしていることです。このトポロジでは、すべてのノードが
同じシールドなしツイスト・ペア・ケーブルで接続されます。こ
自動車産業固有の側面 のバス実装は、各ノードに1つのイーサネットPHYしか必要とし
イーサネットの基本概念の多くは他の産業のものを利用できます ない最適化されたBOMを提供し、他のイーサネット技術に付き
が、自動車用E/Eアーキテクチャには、新たな技術開発を必要と もののスイッチやスター・トポロジを実装する必要がなくなりま
する固有の条件がいくつかあります。自動車用として重要な点の す。この規格では、少なくとも8個のノードをサポートすること
1つは車体重量を減らすことで、これはその車種の走行距離に直 が仕様規定されており(さらに多くのノードもサポート可能)、
接影響します。現在使われているケーブル・ハーネスは、車体サ 最大25mのバス長が可能でなければなりません。
ブシステムの中で重量のかさむもの上位3種の1つに数えられて
います(最大約60kg)3。従来のイーサネット・ケーブルではデー
Zonal ECU
タ伝送に4組の差動ペアが使われていましたが、これでは重量
がかさむ上に配線も複雑になるので、オートモーティブ・アプリ 10BASE-T1S Shared Network
ケーションに適しているとは言えません。この問題を解決すべく、
Node Node Node Node ............ Node Node
1本のツイスト・ペア・ケーブルでイーサネット伝送を行えるよ 0 1 2 3 N-1 N
うに、新しいIEEE規格が開発されました。これと、ゾーン・アー
図2. 10BASE-T1Sのバス・トポロジ
キテクチャによって実現されたケーブル・ハーネス長の短縮を組
み合わせることによって、大幅なケーブルの短縮と重量削減が可 この規格のもう1つの新側面は物理層衝突回避(PLCA)機能で、
能になりました。 これは、その名の通り、共有ネットワーク上での衝突を避けるた
めのものです。この実装では、主にネットワーク上のノード数と
10BASE-T1Sに対するニーズの要因 伝送されるデータ量によって確定的遅延の最大値が決まります。
ゾーン・アーキテクチャという概念の発展と共に、この新しい 各ノードには送信の機会が1回ずつ割り当てられます。その時点
アーキテクチャの利点をフル活用するには、エッジ部分にあるセ で送信すべきデータがノード上にない場合、そのノードは送信の
ンサーやアクチュエータまでのすべてにイーサネット接続できる 機会を次のノードに渡すので、使用可能な10Mbpsを非常に高
必要のあることが明らかになりました。FlexRayやCANといっ い効率で利用することができます。
た既存の従来型接続技術では、プロトコルの変換が必要です。通 ACカップリングされたシステムの場合は、10BASE-T1Sネット
常、これはゲートウェイ内に実装されますが、コスト、複雑さ、 ワークで電源を供給することも可能です。これによってさらなる
遅延を増大させる可能性があります。100BASE-T1などの既存の ケーブルの節約とコネクタ・サイズの小型化が可能になり、配
オートモーティブ・イーサネット技術は、ポイントtoポイントの 線とコネクタに関する複雑さが緩和されることで信頼性も向上し
スイッチング接続を使用する必要があるので、エッジ接続アプリ ます。ポイントtoポイント実装ではすでにPoDL(Power over
ケーションをイーサネットへ移行させるためのシステム・コスト Data Lines)の使用が可能になっていますが、マルチドロップ・
上の要求を満たしていませんでした。以上のような経緯で、この トポロジをサポートするためのIEEE規格強化の一環として、規格
問題への対応をIEEEに求める声が上がりました。主な条件の一 化が進められています。
部を以下に挙げます4。
自動車産業における10BASE-T1Sの用途は広く、様々なセンサー
やアクチュエータを使用することで、車体、快適性、インフォテ
イメント、そして目下議論されているADASなどの領域におい
て、多くの機能を実現することができます。
2 10BASE-T1Sが自動車通信用イーサネット・リンクに必要とされる理由
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まとめ
現在、自動車用E/Eアーキテクチャは革命的な変化の途上に 著者について
あります。ゾーン型E/Eアーキテクチャへの移行も目前です。 Fionn Hurley
10BASE-T1Sはこれまで欠けていた機能を提供し、最適化され アナログ・デバイセズのオートモーティブ・キャビン・エ
たイーサネット–エッジ間接続によってこの移行を支援します。 レクトロニクス・グループ(アイルランド、リメリック)の
このような動きを前進させるには、越えるべきハードルがまだい マーケティング・マネージャ。2007年からアナログ・デバ
くつかあります。例えば、イーサネット接続はモジュール実装時 イセズに勤務。前職はRF設計エンジニア。アイルランドの
のコンポーネントのコストと複雑さを増すと考えられています。 ユニバーシティ・カレッジ・コークで電気および電子工学
10BASE-T1Sは、システム・コストを削減し、シグナル・チェー の学士号を取得。
ンを様々な形で分割することを可能にする様々な製品オプション 連絡先:fionn.hurley@analog.com
を提供することによって、これらの懸念を直接解決します。アナ
ログ・デバイセズは、標準化活動へ積極的に参加し、OEMと密
接な関係を保ちながらそのシステム条件が満たされるようにする
EngineerZone®
ことを通じて、10BASE-T1Sの導入促進に積極的に取り組んでい
ます。 オンライン・サポート・コミュニティ
アナログ・デバイセズのオンライン・サポート・コミュ
アナログ・デバイセズが提供する10BASE-T1S製品と、オート ニティに参加すれば、各種の分野を専門とする技術者と
モーティブ・アプリケーションへの10BASE-T1Sの導入促進計画 の連携を図ることができます。難易度の高い設計上の問
については、弊社へお問い合わせください。 題について問い合わせを行ったり、FAQを参照したり、
ディスカッションに参加したりすることが可能です。
参考資料
1 Cariad. May 2021.
2 R yan Fletcher.“ The Case for an End-To-End Automotive- Visit ez.analog.com
Software Platform.” McKinsey & Company, January 2020.
3 D an Scott.“ Wiring Harness Development in Today’s *英語版技術記事はこちらよりご覧いただけます。
Automotive World.” Siemens, July 2020.
4 1 0Mb/s Single Twisted Pair Ethernet Call for Interest.
IEEE 802.3 Ethernet Working Group.
VISI T A N A L O G . C O M /JP
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