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オートモーティブ・オーディオ・バス(A2B)アプリケーションと車載イーサネット・アプリケーション

ホワイトペーパー

近年、自動車に搭載される電子機器は増加の一途をたどり、複雑化する一方です。その流れを推し進めているのが、インフォテインメントや先進運転支援システム向けの新しい技術(カメラ、レーダー、ライダーなど)の採用と様々な目的(安定性、速度、加速など)で複数のセンサーが使用されるようになった事実です。

このような技術は、広帯域技術と狭帯域技術に分けることができます。通常、センサーには狭帯域技術が使われます。自動車に使われる最も一般的な加速度センサーの出力データ・レート(ODR)は数kHzです。これがインフォテインメントになると、オーディオ・データやビデオ・データには数Mbpsという範囲のデータ・レートが求められます。

しかし、真にハードルを上げているのは、先進運転支援システム(ADAS)の強化を目的に採用する、パーキング・アシスト用HDマルチカメラ・システム、360ºビジョン・システム(バードアイ・ビューまたはサラウンド・ビュー・モニタ・システムとも呼ばれます)、レーダー(RFマイクロ波)、ライダー(光学)などです。自動運転車両の開発においては、これらすべてのシステムを共存させることが鍵となりますが、これはどの通信バスにとっても大きな課題です。

このカタログについて

ドキュメント名 オートモーティブ・オーディオ・バス(A2B)アプリケーションと車載イーサネット・アプリケーション
ドキュメント種別 ホワイトペーパー
ファイルサイズ 1.8Mb
取り扱い企業 アナログ・デバイセズ株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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このカタログの内容

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Technical Article A2Bアプリケーションと 車載イーサネット・ アプリケーション: 何を、いつ、どのように Matteo Crosio、シニア・フィールド・アプリケーション・エンジニア はじめに せることが鍵となりますが、これはどの通信バスにとっても大き 近年、自動車に搭載される電子機器は増加の一途をたどり、複 な課題です。 雑化する一方です。その流れを推し進めているのが、インフォテ 自動車に使用されている従来型バスには以下のものがあります。 インメントや先進運転支援システム向けの新しい技術(カメラ、 レーダー、ライダーなど)の採用と様々な目的(安定性、速度、 X LIN(Local Interconnect Network):最大速度は20kbpsで、 加速など)で複数のセンサーが使用されるようになった事実です。 主に低コストが必須条件で速度/帯域幅は重視されないサブ システム内で使われます。 このような技術は、広帯域技術と狭帯域技術に分けることがで きます。通常、センサーには狭帯域技術が使われます。自動車 X CAN(Controlled Area Network):最大伝送レートは に使われる最も一般的な加速度センサーの出力データ・レート 1Mbpsで、主に電子制御ユニット(ECU)とシステム内にあ (ODR)は数kHzです。これがインフォテインメントになると、 るセンサー(アイドリング・ストップ、パーキング・アシスト、 オーディオ・データやビデオ・データには数Mbpsという範囲の 電動パーキング・ブレーキなどの)間の通信に使われます。 データ・レートが求められます。 X FlexRay:CANより高速ですが(最大10Mbps)、同時に高 価でもあります。これは、元々エックス・バイ・ワイヤ(ドラ しかし、真にハードルを上げているのは、先進運転支援システム イブ・バイ・ワイヤやステア・バイ・ワイヤ)システム向けに (ADAS)の強化を目的に採用する、パーキング・アシスト用HD 採用された技術で、複数のネットワーク・トポロジに対応で マルチカメラ・システム、360ºビジョン・システム(バードアイ・ きるように考えられています。 ビューまたはサラウンド・ビュー・モニタ・システムとも呼ばれ ます)、レーダー(RFマイクロ波)、ライダー(光学)などです。自 動運転車両の開発においては、これらすべてのシステムを共存さ Digital, CAN-Bus, Enable Wire Analog, Shielded Cable Head Active Unit Subwoofer ANC Audio Amplifier 図1 従来のオーディオ・システム用車内配線 VISIT ANALOG.COM/JP
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X MOST(Media Oriented Systems Transport):最大速度 ノード間距離は15mもの長さとすることができ、最大ネットワー は150Mbpsで、オーディオ、ビデオ、音声、データ信号を ク長は40mです。同じUTPが最大300mAの電源を供給します 伝送するために設計されています。物理層からアプリケーショ が(ファントム電源構成)、これはデジタル・マイクロフォンに最 ン層に至るISO/OSIモデルの7つの階層すべてが定義されて 適な値です。 います。これはプロプライエタリなソリューションです。 マスタが提供するパワー・バジェットに不足がある場合は、いつ このようなネットワーク技術の進化に伴い、もう1つの側面が重 でもスレーブ・ノードにローカル電源を提供することができます。 要になってきました。様々なサブシステムに使われている多種多 このバスはマスタ/スレーブ間およびスレーブ/スレーブ間の双 様なバスには、非常に複雑な(そして高価な)配線が含まれていま 方向通信が可能で、上流側と下流側で最大32個のチャンネルに す。車載アプリケーションにおいては、新しい環境規制に適合す 対応します(12、16、24ビット)。最も重要なのは2サイクルの ることは、例えばCO2の排出削減を可能にする新しいシステムの 遅延が確保されていることで、これによって確定的遅延に対応で 開発を意味するため、サイズと重量が新たな課題となってきます。 きるため、ANC/RNCなどの遅延に敏感なアプリケーションに使 こうした背景の下、広帯域幅、低遅延、確定性、堅牢性を備えた 用できます。このバスはI2Cメッセージを伝送できるため、スレー 低価格な通信バスに対するニーズを満たすのは、容易なことでは ブ・ノードのADC/DACを離れた場所に置く構成が可能です。 ありません。 A2Bネットワー クの 構 成 設 定 を 実 際 に 簡 略 化しているの オートモーティブ・オーディオ・バス(A2B) はSigmaStudio ®というグラフィカル設計環境で、これは SigmaDSP®ファミリとSHARC® DSPファミリをサポートしてい ケーブル配線の総重量に大きく影響するものの1つがカー・オー ます。A2Bトランシーバー(AD2428、AD2427、AD2426)は、 ディオ・システムです。これは、それぞれのオーディオ・ソース I2SインターフェースとPDMインターフェースを備えています。 /シンク(ラウドスピーカ)のアナログ配線に高価なシールド・ 通常、I2SインターフェースはADCやDACとの接続に使用し、 ケーブルが必要とされるためです。更に、アクティブ・ノイズ・ デジタル・マイクロフォンにはPDMを使用します。 キャンセル(ANC)システムやロード・ノイズ・キャン セル (RNC)システムには車内に複数のマイクロフォンを設置する必 車載アプリケーションにおける主な懸念事項の1つが、電磁両立 要があり、オーディオ・ネットワークに多数の入力が追加される 性(EMC)です。A2Bは、2線UTPケーブルだけを使用し、最 結果となります。 も厳格な自動車用EMC試験と電磁干渉(EMI)耐性試験に合格 しています。RNCアプリケーションでは、車体の各所に加速度セ 従来型オーディオ・システムにおける実際の車内ケーブル配線を ンサーとマイクロフォンを配置する必要があります。アナログ部 図1に示します。 品を使用するには追加的な回路(A/Dコンバータ)や配線、コネ オートモーティブ・オーディオ・バス(A2B®)は、インライン・ クタが必要なので、非常にコストがかかります。A2B技術は、オー トポロジを実装できるアナログ・デバイセズの革新的技術で、1 ディオ・ソースとセンサーへの新たなアプローチによって、この つのマスタに最大10個のスレーブをデイジー・チェーン接続す アーキテクチャを簡素化します。 ることができます。50Mbpsの速度を実現するA2Bは、オーディ オ・アプリケーション用に最適化されています。シールドなしツ イストペア(UTP)ケーブルを使用することによって接続が大幅 に簡素化されており、ハーネスの総重量を最大75%軽減します。 UTP Wire A2B Head Active Unit Subwoofer ANC Audio Amplifier 図2 A2B技術により簡素化されたオーディオ・システム用車内配線 2  A2Bアプリケーションと車載イーサネット・アプリケーション: 何を、いつ、どのように
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車載イーサネット AVBは、時間同期機能とトラフィック・シェーピング機能を提 イーサネットは広く使われているネットワーク技術で、非常に大 供するスイッチ技術です。これらの基本的な概念により、イーサ きなエコシステムを構成しています。しかし、自動車分野におけ ネットによるオーディオおよびビデオ・コンテンツの確実な送信 るイーサネットの使用は、現在のところ診断機能、車載インフォ が可能になります。AVBの出現により、タイム・センシティブ・ テインメント・システム、センサーとの接続といった一部の用途 ネットワーキング(TSN)として知られる一連のプロトコルが定 に限られています。車載アプリケーションにおいてそのライバル 義されました。これは工業および自動車市場に焦点を当てたもの になると予想されているのがMOSTで、両者は速度の点で競合 で、イーサネットによるリアルタイム機能のサポートを可能にし しています。 ます。 イーサネットは、最新技術(レーダーやライダーなど)に伴って 以上から、IEEE 802.3bwとTSNを組み合わせれば、自動車内の 生じる帯域幅への非常に大きな需要に対し、決定的な回答となる 確定的通信に適したソリューションを実現して、従来のバスに置 可能性を秘めていますが、依然として自動車への採用を制限する き換えることができます。更に100-Base-T1は、1Gbpsに達し 要素がいくつかあります。 得る新しい1000-Base-T1規格に発展しつつあります。しかし、 これらのシステムは複雑で、その技術もまだ十分には成熟してお 100-Base-TXに使われる従来のイーサネット・ケーブルは2線 らず、自動車市場に広く展開するには至っていません。 差動ペア・ワイヤを基本とし、トランスにより絶縁されますが、 車載アプリケーション用としてはコストが高すぎます。更に、 Cat-5ケーブルは自動車用EMI基準を満たしていないため、診断 考えられるシナリオ 機能やファームウェア・アップデートを除き、100-Base-TXイー 自動車市場は車内でのオーディオ伝送にA2Bを採用し始めていま サネットを車内通信に使用することはできません。 すが、イーサネットのほうは、様々なバス・システムからのデー タを伝送するという点では大量に実装されるには至っていません。 車両同士の通信(V2V)や車両と車両以外のあらゆるものとの通 信(V2X)のためには、同期、トラフィック・シェーピング、固 ANC、ハンズフリー・システム、電気自動車(EV)の車両接近 定遅延などの条件を満たす車内データ伝送がサポートされていな 通報装置、緊急通報(eCall)システムなどのアプリケーション ければなりません。新しいプロトコル・スタックが実装されてい は、A2B技術が実現する簡素化の恩恵を受ける部分です。更に、 なければ、イーサネットはこの種の機能をサポートしません。 将来的には、デジタル・センサーの情報を直接A2Bへ送り、RNC システムのアーキテクチャを簡素化することも考えられます。 まず物理層から考えてみましょう。 しかし、A2Bにはバス速度に関係する帯域幅の制約があります。 重量、EMI、およびコストに関する条件を満たすことを目的に、 1000-Base-T1が技術的に成熟すれば、イーサネットの伝送速度 米国電気電子技術者協会(IEEE)は802.3bwと呼ばれる新しい は1Gbpsに達します。この帯域幅なら、センサーからオーディ 規格を定めました。この規格は100-Base-T1とも呼ばれていま オ/ビデオ・ストリームまで、様々な種類のデータを容易に伝送 す。IEEE 802.3bwはUTPケーブルに基づく100Mbps規格で、 することができます。 双方向性を有しており、自動車用の厳しい放射規制条件を満たし ています。EMIは、重ね合わせ原理や特別なエンコーディング、 自動運転を実現するには、マルチギガビットのネットワーク接続 スクランブリングなどの手法を使用することによって抑制されて へ向けて、さらなる性能の向上が求められます。では、今後の数 います。 年間にどのようなシナリオ展開を予測しておくべきでしょうか。 重量とコストは、従来のCat-5ケーブルではなく、シールドなし A2Bは実装が容易な技術で、同じUTPを使って電源とデータを伝 の2線ケーブルを使用すれば、低く抑えられます。PoE(Power 送し、固定遅延を実現するための確定性をサポートしています。 over Ethernet)などの技術は、同じワイヤを使用してデータと 現行の100-Base-T1規格(および将来的には1000-Base-T1) 共に電源を供給します。しかし、PoEでは電源を供給するために でのイーサネットは、複数のデータ・バスの集約を可能にする統 少なくとも2ペアのワイヤが必要で、これはワイヤ数を減らすと 合的な技術になることが予想されますが、電源(PoDL)とスイッ いう要求と明らかに矛盾します。 チによる確定性(TSN)の追加によって複雑さが増すおそれがあ このような理由から、IEEEは802.3bu規格を定めました。こ ります。 れはPoDL(Power over Data Lines)とも呼ばれています。 考えられるのは、A2Bに基づくオーディオ伝送およびセンサー用 PoDLでは1ペアのワイヤで電源を供給できますが、トランシー の混合的なソリューションと、カメラ、ライダー、レーダー用に バーの構成が多少複雑になります。 高速ギガビット・イーサネットを実装したバックボーンが、自動 既に述べたように、イーサネットが車載アプリケーションをサ 車産業における今後の中期的なニーズのほとんどに適したものに ポートするには、確定性を提供するスイッチを追加する必要があ なるというシナリオです。 ります。これは、ISO/OSIモデルの第2層を担当する組織である IEEE 802.1が策定したAVB(Audio Video Bridging)プロトコ ルによって実現できます。 Visit analog.com/jp  3
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CMC CMC C1 L1 L5 C8 PHY PHY C2 L2 L6 C9 DMI DMI L3 L4 C3 C4 C6 C7 L7 L8 C5 R1 R2 R3 R4 C10 Power Supply Load 図3 基本的なPoDLアーキテクチャ:データと電源が同じ差動チャンネルを共有 Camera Lidar Radar Ethernet Switch Multidomain Active Controller Subwoofer ANC Audio Amplifier 図4 マルチドメイン・アーキテクチャ 著者について オンライン・ Matteo Crosio サポート・ コミュニティ 2011年アナログ・デバイセズ入社。イタリアでフィール アナログ・デバイセズのオンライン・サポート・コミュニ ド・アプリケーション・エンジニアとして勤務。アナログ・ ティに参加すれば、各種の分野を専門とする技術者との連 デバイセズ入社前の10年間、半導体分野の様々な技術職 携を図ることができます。難易度の高い設計上の問題につ を経験。航空宇宙および電気通信アプリケーション分野で いて問い合わせを行ったり、FAQを参照したり、ディス のミックスド・シグナル技術のキャリアに加え、時間同期 カッションに参加したりすることが可能です。 に焦点を当てたハードウェアおよびFPGA設計者として豊 富な経験を有する。現在、ヨーロッパの販売組織の一員と して、有線通信技術に関してEMEA地域をサポート。 ez.analog.com にアクセス 連絡先:matteo.crosio@analog.com *英語版技術記事はこちらよりご覧いただけます。 本    社 〒105-6891 東京都港区海岸1-16-1 ニューピア竹芝サウスタワービル10F 大 阪 営 業 所 〒532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原3-5-36 新大阪トラストタワー10F 名古屋営業所 〒451-6040 愛知県名古屋市西区牛島町6-1 名古屋ルーセントタワー38F ©2020 Analog Devices, Inc. All rights reserved. 本紙記載の商標および登録商標は、各社の所有に属します。 Ahead of What’s Possible はアナログ・デバイセズの商標です。 TA21665-10/19 VISIT ANALOG.COM/JP MDI Connector MDI Connector