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【技術資料】液体測定 ― 水から血液まで

ホワイトペーパー

液体の組成と品質を測定することは、様々な用途に不可欠な要素です。
その代表例が、世界で最も重要な原材料である水です。

きれいな水と浄水技術は世界中で重要な役割を果たしており、生活に欠かせません。
減り続けるきれいな水資源を利用できることは、ますます重要なテーマとなりつつあります。

しかし、液体測定の例は水だけではなく、はるかに広い範囲に及んでいます。
血液、唾液、排泄物といった医療関連の液体は健康に直接関係することから、疾病の可能性を判断するために検査可能であることが必要です。

これらの測定すべてに共通するのが、基盤となる測定原理であるインピーダンス測定です。
本稿では、医療用途の液体測定に的を絞って、個々のアプリケーションとインピーダンス測定の汎用性について論じます。

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ドキュメント名 【技術資料】液体測定 ― 水から血液まで
ドキュメント種別 ホワイトペーパー
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取り扱い企業 アナログ・デバイセズ株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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このカタログの内容

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Technical Article 液体測定 ― 水から血液まで Christoph Kämmerer、フィールド・アプリケーション・エンジニア はじめに 液体の組成と品質を測定することは、様々な用途に不可欠な要 もちろん、以上に述べた測定がすべてではありません。人間や動 素です。その代表例が、世界で最も重要な原材料である水です。 物の医療技術で用いられる液体測定は、例えばホルモンの測定や きれいな水と浄水技術は世界中で重要な役割を果たしており、 医薬品の測定など、この他にも多数あります。これらの場合も、 生活に欠かせません。減り続けるきれいな水資源を利用できる やはりインピーダンス測定が重要です。 ことは、ますます重要なテーマとなりつつあります。しかし、 測定はすべてそれぞれ異なるパラメータを求めるものですが、い 液体測定の例は水だけではなく、はるかに広い範囲に及んでい ずれもインピーダンス分析が基礎となっています。このような測 ます。血液、唾液、排泄物といった医療関連の液体は健康に直 定にはどれも多くの側面がありますが、共通する点が1つありま 接関係することから、疾病の可能性を判断するために検査可能 す。ウェアラブル・デバイスに対応するために、省電力や省スペー であることが必要です。これらの測定すべてに共通するのが、 スのソリューションに対するニーズが大きいことです。以下では、 基盤となる測定原理であるインピーダンス測定です。本稿で 様々なインピーダンス測定方法について述べます。これらの方法 は、医療用途の液体測定に的を絞って、個々のアプリケーショ の中には、分析を行うために組み合わせて使われるものもあれば、 ンとインピーダンス測定の汎用性について論じます。 個別に使われるものもあります。 医療分野の液体測定 様々なインピーダンス測定原理 医療分野で最も広く知られている液体測定が、血液中のグルコー インピーダンス測定の背景となる基本原理はすべてのアプリケー ス測定です。この場合、試験片上の一滴の血液で十分に血糖値レ ションに共通していますが、個々の測定能力には大きな違いがあ ベルを判定することが可能で、患者はこの値に基づいて投薬量や ります。以下では、液体測定に最も関係深い方法について説明し 食事を調整することができます。将来的には、技術の進歩により、 ます。 単発的な測定から、血糖値を常にモニタするための連続的な測定 へと方法が変わっていくことが予想されます。そのためには、極 めて正確で省電力のインピーダンス測定がすぐにでも必要です。 ポテンショスタット 最も基本的かつ広範に使われる測定原理は、ポテンショスタット 液体測定のもう1つの用途が透析です。慢性腎不全の場合は、血 に基づくものです。図1に示すように、ポテンショスタットは、 液を濾過する必要があります。透析液の導電率も、インピーダン 作用電極(WE)と基準電極(RE)間の電圧の測定と制御を行い ス分析により測定されます。この方法で、例えばpH、導電率、 ます。WEの電位は、対電極(あるいは補助電極)に流れる電流 組成、飽和度などを測定することが可能になります。 の調整を通じ、基準電極に対して一定に保たれます。 最後に、患者の排泄物や尿も測定されます。この場合は、疾病や 異常の判定を下すために排泄物を検査します。これは医療分野で Input は比較的新しい領域で、多種多様なアプローチと広範な方法が存 Voltage Power 在します。しかし、その基礎となるのは電極を介したインピーダ Amplifier ンス測定であり、これによって様々な疾病の判定を下すことが可 CE 能となります。ここではpH測定に加えて、例えば導電率測定が 行われます。 RE WE 図1 ポテンショスタット測定の原理 VISIT ANALOG.COM/JP
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電流測定 電気化学式インピーダンス分析 電流測定の最も単純な形態は、バイアス電圧をセンサーに印加し 電気化学式インピーダンス分析は、全周波数域を通じて電気化 応答電流を測定するものです。この場合、REとWEの間には一 学セルやセンサーのインピーダンスを測定するものです。周波 定の電圧が加えられ、電流/電圧コンバータとA/Dコンバータ 数の変化に伴うインピーダンスの変化によってセンサーの消耗を (ADC)を使って電流プロファイルがデジタル信号に変換されま 測定し、それに合わせてシグナル・チェーンを自動的に調整する す。この電流プロファイルは、センサーと測定変数の両方に依存 ことができます。ここでは、時間の経過(数日間から数週間)に したものとなります。ADuCM355を使用した回路を図2に示し 伴うセンサー精度の低下が問題となります。これは様々な測定の ます。 全体的精度にかなりの悪影響を及ぼす可能性があり、例としては 継続的なグルコース測定(CGM)が挙げられます。これらの測 ADuCM355 定は健康にとって重要なものなので、センサーの精度は継続的に CE DACPA チェックする必要があります。回路の例を図3に示します。 ULP RE Sensor Cortex-M3 Processor ADuCM355 WE TIA High Performance AFE with Flexible Switch Matrix and 16-bit ADC Unknown Exciter Impedance Voltage Digital Preprocessing Features DFT Accelerator R_cal Current 図2 電流測定 Calibration Measurement Impedance サイクリック・ボルタンメトリ ボルタンメトリ測定は電気化学的に作用するもので、測定時は電 図3 電気化学式インピーダンス分析 気化学セルの電位がゆっくりと上昇し、その後は直線的に減少 します。したがって、電位は三角波状に変化し、その間にWEを 以上に述べた医療用の各種測定は要求事項とパラメータが大きく 流れる電流が測定されます。ボルタンメトリは、例えば分析物の 異なるので、それぞれに使われる測定方法も異なります。更に、 ハーフセル反応の測定に使われます。この方法は電気分解の一形 補償のための温度測定により温度キャリブレーションを行うこと 態であり、得られる電流は酸化還元反応の結果です。この方法で も必要になります。また、精度の補完や向上のため、部分的に複 は、サンプルを定性的、定量的に調べることができます。 数のセンサーを使用する必要もあります。ディスクリート設計の 場合、これらの測定にはすべて広い回路基板面積が必要で、消費 導電率測定 電力も大きくなります。 導電率測定は、液体のオーム抵抗を求めることによって行われま 最近、特に医療技術分野では、ウェアラブル・デバイスや使用可 す。この測定は、互いに平行に配置した2個の不活性電極を液体 能なデバイスに挿入できるように、小型で消費電力の小さい低コ 中に浸漬し、ACを使用して抵抗を測定することによって行いま ストのソリューションが求められています。アナログ・デバイセ す。このプロセスを通じて電解質の移動度、粒子密度、酸化状態 ズのADuCM355は、まさにこのような設計課題に対応するため を予想することで、最終的に溶液の濃度を求めることができます。 に開発された製品です。 pH測定 ADuCM355 ― あらゆる用途に対応できる pH測定はハーフセル反応の原理に基づいて行われます。この反 汎用デバイス 応は電極メンブラン上で生じ、H+イオン濃度と直接的な依存関 1つであらゆる測定に対応できるソリューションがADuCM355 係にあります。この電位差から電圧が生じますが、その値とpH です。高度に集積化されたこのチップは、省電力化されたアナロ との関係は直線的です。pH測定における大きな問題の1つはpH グ・フロント・エンドと、巡回冗長検査(CRC)などのハウスキー センサーの直列抵抗が非常に大きいことで、このため分析用の電 ピング機能とセキュリティ機能を受け持つマイクロコントローラ 子機器に大きな役割が課せられます。 で構成されています。主要コンポーネントを示したADuCM355 のブロック図を図4に示します。 2  液体測定 ― 水から血液まで
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その他の測定 ADuCM355 Potentiostat 0: Oscillators 以上に述べた測定用のセンサーのほとんどは、ADuCM355の Amplifiers and DAC 入力を介して直接操作することができます。これは、例えばグ Current 16-Bit ARM GPIOs withExternal ルコース測定などのポテンショスタット測定に使用できます。 Channels ADC Cortex-M3 Interrupts これに対し、導電率やpHの測定などをより正確に測定するには Voltage LDO SRAM SPI/I2C Channels Regulators Flash Memory UART 拡張シグナル・チェーンが必要となり、LTC6078などのチップ Internal Voltage Timers, を外付けする必要があります。この場合は、正確な値を読み取 Channels DMA Wake Up References Watchdogs ることができるようにセンサーの高い出力インピーダンスに合 Temperature Channels CRC わせて調整を行うため、入力インピーダンスを大きくします。 R/W Protection Potentiostat 1: 以上に述べた測定とは別に、センサーの変動を補償できるよう Amplifiers and DAC Impedance Engine に温度を測定する必要もあります。拡張された測定原理を図5 Amplifiers and DAC に示します。より大規模なシグナル・チェーンを使用すること 図4 ADuCM355のブロック図 により、ADuCM355を使用して電圧と電流の両方を読み出す ことができます。図に示す回路を使用すれば、100Ω未満から このデバイスは、非常に小さい消費電力で電気化学式センサーと 10MΩまでの範囲のインピーダンスを検出することができます。 生物学的センサーを制御します。ARM® Cortex®-M3プロセッ この広い測定範囲によって、医療分野に必要とされるインピーダ サ技術をベースとしたこのチップは、電流、電圧、および抵抗の ンス範囲のすべてに対応することが可能となります。導電率の測 測定機能を備えています。また、入力バッファ付きの16ビット 定においては、様々な濃度を測定できるように、ダイナミック・ 400kSPSマルチチャンネルSAR ADCに加えて、アンチエイリ レンジの広いことが特に重要です。 アシング・フィルタ(AAF)とプログラマブル・ゲイン・アンプ (PGA)を内蔵しています。電流入力のトランスインピーダンス・ ADuCM355 アンプ(TIA)はプログラマブル・ゲイン式で、様々なセンサー・ REO タイプに対応するための負荷抵抗が組み込まれています。AFE SEO Low Power ULP Cortex-M3 pH, LTC6078 AIN6 Potentiostat Processor Advanced も、外部の電気化学式センサーに対してバイアス電圧を一定に保 Conductivity Security Sensor LTC6078 つことができるよう、ポテンショスタット用に特別に開発された AIN5 High Performance アンプを内蔵しています。それぞれの入力チャンネルは、ADC AFE with Flexible Switch Matrix 前段にある入力マルチプレクサを介して選ぶことができます。こ and 16-Bit ADC れらの入力チャンネルには、3つの外部電流入力と、複数の外部 Digital 電圧入力および内部チャンネルが含まれています。3つある電圧 Temperature RE1 Preprocessing SE1 Low PowerSensor Features D/Aコンバータ(DAC)のうちの2つは、デュアル出力DACで Potentiostat DFT Accelerator す。デュアル出力DACの1つめの出力はポテンショスタット・ア ンプの非反転入力を制御し、もう1つの出力はTIAの非反転入力 図5 ADuCM355を使用したpH、温度、導電率の測定 を制御します。3つめのDAC(高速DACとも呼ばれる)は、イ ンピーダンス測定用の高性能TIAに合わせて設計されています。 まとめ DACの出力周波数範囲は最大200kHzです。ARM Cortex-M3 様々な液体の測定にはインピーダンス測定が基本原理として使 プロセッサは柔軟なマルチチャンネルのダイレクト・メモリ・ア われますが、測定方法は液体によってそれぞれ異なります。例え クセス(DMA)コントローラも備えており、このコントローラは ば、異なるパラメータを記録するには異なるセンサーを接続する 2つの独立したシリアル・ペリフェラル・インターフェース(SPI) 必要があります。この多様性に対応する一方で、小型の省電力デ ポート、1個のユニバーサル非同期レシーバー/トランスミッタ バイスを求める傾向の高まりにも対処するために、スマート・ソ (UART)、および1個のI2C通信ペリフェラルをサポートします。 リューションの導入は喫緊の課題です。ADuCM355はこれらの 一連の通信ペリフェラルは、必要に応じ特定のアプリケーション 要求をすべて満たすだけでなく、医療分野のインピーダンス測定 に合わせて構成することができます。これらのペリフェラルには、 においてスイスのアーミー・ナイフのような役割を果たします。 UART、I2C、2つのSPIポート、および汎用入出力(GPIO)ポー 実際にこのICは、液体測定に加え、例えば体内脂肪の分析や皮 トが含まれています。これらのGPIOをユニバーサル・タイマー 膚のインピーダンスなど、医療分野における他のインピーダンス と組み合わせれば、パルス幅変調(PWM)出力を形成すること 測定も可能にします。更に、その汎用性によって、適切なセンサー ができます。 を使用することでCOやCO2などのガスを電気化学的に測定す ることも可能です。このことが、ADuCM355をインピーダンス 測定用のオールインワン・パッケージとして使用することを可能 にしています。 Visit analog.com/jp  3 Mux
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著者について オンライン・ Christoph Kämmerer サポート・ コミュニティ 2015年2月からドイツのアナログ・デバイセズに勤務。 アナログ・デバイセズのオンライン・サポート・コミュニ 2014年にエアランゲンのフリードリヒ・アレクサンダー大 ティに参加すれば、各種の分野を専門とする技術者との連 学を卒業。物理学修士。プロセス開発のインターンとして 携を図ることができます。難易度の高い設計上の問題につ リムリックのアナログ・デバイセズに勤務。2016年12月 いて問い合わせを行ったり、FAQを参照したり、ディス に訓練生プログラムを修了し、現在はアナログ・デバイセ カッションに参加したりすることが可能です。 ズのフィールド・アプリケーション・エンジニア。新規ア プリケーション担当。 ez.analog.com にアクセス 連絡先:christoph.kaemmerer@analog.com *英語版技術記事はこちらよりご覧いただけます。 本    社 〒105-6891 東京都港区海岸1-16-1 ニューピア竹芝サウスタワービル10F 大 阪 営 業 所 〒532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原3-5-36 新大阪トラストタワー10F 名古屋営業所 〒451-6040 愛知県名古屋市西区牛島町6-1 名古屋ルーセントタワー38F ©2020 Analog Devices, Inc. All rights reserved. 本紙記載の商標および登録商標は、各社の所有に属します。 Ahead of What’s Possible はアナログ・デバイセズの商標です。 TA21690-10/19 VISIT ANALOG.COM/JP