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RTDによる温度測定用アナログ・フロントエンドの設計

ホワイトペーパー

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ドキュメント名 RTDによる温度測定用アナログ・フロントエンドの設計
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取り扱い企業 アナログ・デバイセズ株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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RTDによる温度測定用アナログ・フロント エンドの設計 著者:Barry Zhang/Alex Buda はじめに としては、 0 . 1%精度という高精度、低ドリフトの抵抗 温度測定を行うために、Σ Δ変調方式のA / Dコンバータ を使用します。 (A D C)とRT D(測温抵抗体)を組み合わせて使用する このような回路を使用して製品を設計する場合、図 2に システム設計者は少なくありません。しかし、選択した 示すように、ローパスのフィルタリングと過電圧保護 ADCが、データシートに記載されている優れた性能を発 を適用するために、アナログ入力ピンと外部リファレン 揮できるようにするのは容易なことではありません。例 ス・ピンにいくつかの抵抗とコンデンサを付加します。 えば、分解能が 1 6~ 1 8ビットのA D Cを使用しているの 以下では、ノイズ性能の向上につながる適切な抵抗とコ に、実使用時には12~13ビットのノイズ・フリー・ビッ ンデンサを選定するための検討事項について説明します。 ト性能しか得られないといった場合があるということで す。そのような場合、本稿で紹介するフロントエンド回 ADC 路を適用すれば、16ビット以上のノイズ・フリー・ビッ IEXC トを達成することが可能になります。 R 1 RT D AIN1を使用してレシオメトリック測定を行うことには、 C 1 励起電流源の精度やドリフトといった誤差要因を排除 R RTD CR 32 C 2 できるというメリットがあります。図 1に示すのは、 4 AIN2 線式のRT Dを使用した標準的なレシオメトリック測定 R 3 REF + 用の回路です。 4線式のRT Dを使用するメリットとして C 4 R Ref C は、リードの抵抗に起因する誤差を打ち消せることが挙 6R 4 C 5 げられます。 REF– I 注) ADIが提供するΣΔ方式ADCの多くは、EXC 励起電流源を内蔵している ADC 図 2 . 4線式のRT Dを使用する レシオメトリック測定用の標準的な回路 4線式の R LEAD RTD AIN1 図2を見ると、R 1、R 2、C 1、C 2、C 3は、1次のローパス・ R RTD VRTD フィルタとして使用されていることがわかります。これ らは差動モードの電圧信号とコモン・モードの電圧信号 AIN2 R を減衰させるためのものです。ここで、R 1とR 2の値、C 1LEAD と C 2の値は同一でなければなりません。同様に、 R 3、 R 4、C 4、C 5、C 6は、リファレンス・パス用のローパス・ REF + フィルタとして使われています。 R Ref VRef REF– コモン・モード用のローパス・フィルタ 図 3に示したのは、コモン・モード用のローパス・フィ 図 1 . 4線式のRT Dを使用した ルタの等価回路です。 レシオメトリック測定用の回路 この回路では、次の2つの式が成立します。 VRTD = RRTD × I REXC 1 + a AIN1 V CRef = RRef × IEXC 1Vin C R 3 2 C2 b – AIN2 ADCがバイポーラの差動入力モードで動作する場合、一 般に、RT Dの抵抗値R RT Dを計算するには次の式を使用 します。 Ccm = C1 = C2 Code R = R1 = R2 R RTD × RRef RTD = CodeADC_Fullscale 図 3 . コモン・モード用のローパス・フィルタ 図の a点におけるコモン・モード電圧は b点の電圧と等 ここで、Code RTDはADCの出力コード、Code ADC_Ful l s ca l eは ADC しいので、C には電流は流れません。したがって、コモのフルスケールの出力コードです。 3 ン・モード用のカットオフ周波数は次の式で表すことが 測定されるRT Dの抵抗値は、理論的にはリファレンス できます。 抵抗の精度とドリフトだけに依存します。一般に、R R e f f 1 1= = 2π R1C1 2πRCcm Analog Dialogue 50-03 1
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差動モード用のローパス・フィルタ 度計測用のアナログ・フロントエンドIC「AD7124-4」に 差動信号用のローパス・フィルタでは、カットオフ周波 は、AIN2、AIN3というアナログ入力ピン(以下、AIN 数はどのようになるのでしょうか。これについて理解す ピン)が描かれています。これらA I Nピンに3 k Ωの抵抗 るために、図4のコンデンサC を、図5のような2つのコ を付加すると、 3 0 Vまでの過電圧に対する保護が可能3 ンデンサC とC に分割して考えてみます。 になります。しかし、A I Nピンに大きな抵抗を付加するa b のはお勧めできません。その理由は 2つあります。 1つ は、熱ノイズが増加するからです。もう1つは、A I Nピ ンの入力電流がそれらの抵抗に流れて誤差が生じるため です。入力電流の値は一定ではないことに加え、2本の R1 + A I Nピンの入力電流に不整合があると、ノイズが生成さ AIN1 C1 れてしまいます。しかも、そのノイズは抵抗値が大きい Vin C R 3 2 C ほど大きくなります。 – 2 AIN2 抵抗とコンデンサの値は、最終的な回路の性能を左右す る重要な要素です。設計者は、回路の使用現場で求めら れる要件を把握し、上記の式に基づいて抵抗とコンデン サの値を計算する必要があります。励起電流源を内蔵す 図 4 . 差動モード用のローパス・フィルタ るA D IのΣ Δ方式A D Cと高精度アナログ・マイクロコン トローラでは、A I Nピンとリファレンス・ピンに同じ値 の抵抗とコンデンサを使用することを推奨しています。 このように設計することで、アナログ入力電圧がリファ レンス電圧に比例し、温度ドリフトと励起電流のノイズ R1 + AIN1 によってアナログ入力電圧に誤差が生じても、リファレ C1 Ca ンス電圧も変動することによってそれが補償されます。 Vin R2 C – 2 Cb AIN2 ADuCM360を使用した場合のノイズ性能 Ccm = C1 = C2 「ADuCM360」は、完全に IC化されたデータ・アクイジ Ca = Cb = 2C3 ション・システムです。その中心にあるのは、サンプル・ R = R1 = R2 レートが3 .9kSPS(キロサンプル /秒)、分解能が24ビッ 図 5 . 差動モード用のローパス・フィルタの等価回路 ト、デュアル構成の ΣΔ方式ADCです。それ以外に、32 ビットのプロセッサ「A R M ® C o r t e x ®- M 3」やフラッシ 図5のように考えれば、差動モードのカットオフ周波数 ュメモリ / E Eメモリをシングルチップ上に集積していま は次のようになることがわかります。 す。さらに、ゲインをプログラムできる計装アンプ、高 f 1 1 精度のバンドギャップ・リファレンス、プログラマブル= = 2π R1 (C1 + Ca) 2π R (Ccm + 2C3) な励起電流源、柔軟性の高いマルチプレクサなど、多く の回路を搭載しています。この ICは、抵抗を利用する温 度センサーに直接接続することができます。 一般に、C 3の値はC c mの値の1 0倍とします。これは、C 1 とC 2の不整合による影響を抑えるためです。例えば、ア A D u C M 3 6 0をRT Dによる測定に使用する場合、通常は ナログ・デバイセズ(A D I)が公開している回路ノート REF-ピンをグラウンドに接続します。これであれば図2 「C N - 0 3 8 1」には、図 6のアナログ・フロントエンド回 のR 4とC 5には電流が流れないため取り除くことができま 路が記載されています。この場合、差動信号用のカット す。また、C 4とC 6は並列なので、1つにまとめることが オフ周波数は約8 0 0 H z、コモン・モード信号用のカット 可能です。ただ、実際にはC 4はC 6よりもかなり小さいの オフ周波数は16kHzとなります。 で無視できます。以上のようにして簡素化したアナログ・ フロントエンド回路を図7に示しました。 AD7124-4/ ADuCM360 Pt100 AD7124-8 RL1 I IOUT0 (AIN0) EXC R1 RL2 1 kΩ AIN1 AIN2 C1 0.01 µF RRTD C3 0.1 µF R2 C2 AIN2 RL3 1 kΩ AIN3 R3 0.01 µF REF+ RL4 RRef C6 REF– C1 = C6 = 0.1 µF 図 6 . A D 7 1 2 4を使用したRT D測定用のアナログ入力回路 C1 = C2 = 10 nF 図 7 . RT Dを使用した温度測定用のアナログ・ 抵抗とコンデンサに関する検討事項 フロントエンド回路(A D u C M 3 6 0用の入力回路) R 1とR 2はローパス・フィルタの一部ですが、それ以外に、 過電圧保護の役割も果たします。図6で使用している高精 表 1に、アナログ入力パスとリファレンス入力パスに、 整合のとれたフィルタを配置した場合と整合のとれてい 2 Analog Dialogue 50-03
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ないフィルタを配置した場合のノイズの測定結果を示 まとめ しました。R RT Dの代わりに高精度の 1 0 0 Ωの抵抗を使用 し、ADC RTDを使用するレシオメトリック測定アプリケーション の入力ピンにおけるノイズ電圧を測定していま R では、ぜひ本稿に示した検討事項に従い、整合のとれた す。 Refの値は5 .62kΩとしました。 R Cフィルタ回路を使用してください。温度測定を行う 現場で求められる要件に基づいて適切な抵抗値とコンデ 表1. ノイズの測定結果 ンサ値を選択すれば、最適な結果を得ることができます。 100Ωの抵抗におけるノイズ電圧〔μV〕 ADCの ISOURCE ゲイン (μA) R1 = R2 = R3 = 1k R1 = R2 = 10k R3 = 1k 関連資料 16 100 1.6084 1.8395 CN-0381 Circu i t Note「 4線式RTDに対応する完全集積型 16 200 1.6311 1.7594 の計測システム、低消費電力で高精度の24ビットΣΔ方式 16 300 1.6117 1.9181 ADCを搭載」 Ana log Dev ices 16 400 1.6279 1.9292 CN-0267 C i rcu i t No te 「HARTインターフェースを備え たフル機能の4mA~20mAループ電源フィールド計測器」 表 1から、整合のとれたアナログ・フロントエンド回 Analog Dev ices 路(R 1とR 2の値がR 3の値と同じ)を使用した場合、整 合のとれていない回路を使用した場合と比べてノイズ を約 0 . 1 μ V~ 0 . 3 μ V抑えられることがわかります。つま り、A D Cの P G Aのゲインが 1 6である場合、ノイズ・フ リー・ビット数が約0 . 2 5ビット増加して1 6 . 2ビットにな ります。 Barry Zhang 著者: Barry Zhang(barry.zhang@analog.com)は、ADIのアプリケーション・ エンジニアであり、中国北京の拠点で業務に携わっています。ADIに入社 したのは2011年で、Integrated Precisionグループに所属しています。ADI に入社する前は、ハードウェア技術者としてRIGOL Techno log ie s社と Put ian社に在籍していました。北京科技大学でメカトロニクス工学の修 士号を取得しています。 Alex Buda Alex Buda(alex.buda@analog.com)は、ADIのIntegrated Precisionグル ープに所属するアプリケーション・エンジニアです。入社は2012年で、 高精度のアナログ・マイクロコントローラを担当しています。2012年に アイルランド国立大学メイヌース校で電子工学およびコンピュータの第 一級栄誉学士号を取得して卒業しました。学位取得プログラムの一環と して、ADIのIntegrated Precis ionグループに6カ月間在籍していました。 Analog Dialogue 50-03 3