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【技術記事】24GHz~44GHzに対応する高集積度のアップ コンバータ/ダウンコンバータ、マイクロ波 システムの性能向上と小型化を実現
その他
著者: James Wong、Kasey Chatzopoulos、Murtaza Thahirally Analog Devices, Inc.
アナログ・デバイセズの「ADMV1013」と「ADMV1014」は、それぞれマイクロ波に対応するアップコンバータICとダウンコンバータICです。これらの製品は、24GHz~44GHzという非常に広い周波数範囲に対応し、1GHz以上の瞬時帯域幅を実現します。広く検討されている28GHzと39GHzの帯域をカバーしているため、バックホールやフロントホールなど、超広帯域に対応するトランスミッタ/レシーバー・アプリケーションに最適です。50Ωに整合されているなど、ミリ波を使用する5G向け小型プラットフォームの設計/実装を簡素化するための特徴を備えています。
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このカタログについて
ドキュメント名 | 【技術記事】24GHz~44GHzに対応する高集積度のアップ コンバータ/ダウンコンバータ、マイクロ波 システムの性能向上と小型化を実現 |
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ドキュメント種別 | その他 |
取り扱い企業 | アナログ・デバイセズ株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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デザイン・ノート
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24GHz~44GHzに対応する高集積度のアップ
コンバータ/ダウンコンバータ、マイクロ波
システムの性能向上と小型化を実現
著者: James Wong、Kasey Chatzopoulos、Murtaza Thahirally
Analog Devices, Inc.
アナログ・デバイセズの「ADMV1013」と「ADMV1014」は、 (800MHz~6GHzに対応)向けに構成することが可能な直交
それぞれマイクロ波に対応するアップコンバータICとダウンコ 位相シフタや、I(同相)チャンネル用ミキサー、Q(直交位
ンバータICです。これらの製品は、24GHz~44GHzという非常 相)チャンネル用ミキサーを内蔵しています。また、アップコ
に広い周波数範囲に対応し、1GHz以上の瞬時帯域幅を実現しま ンバータであるADMV1013のRF出力部には、送信用のドライ
す。広く検討されている28GHzと39GHzの帯域をカバーしてい バ・アンプと可変電圧アッテネータ(VVA:Voltage Variable
るため、バックホールやフロントホールなど、超広帯域に対応 Attenuator)が用意されています。一方、ダウンコンバータで
するトランスミッタ/レシーバー・アプリケーションに最適で あるADMV1014のRF入力部には、低ノイズ・アンプ(LNA)、
す。50Ωに整合されているなど、ミリ波を使用する5G向け小型 ゲイン段、VVAが配置されています。どちらのICも、LO(局部
プラットフォームの設計/実装を簡素化するための特徴を備え 発振器)用のパスは、LO用のバッファ、周波数逓倍器(4倍)
ています。 、プログラマブルなバンドパス・フィルタで構成されていま
ADMV1013とADMV1014は、いずれも高い集積度を誇る製 す。ほとんどのプログラマブルな機能やキャリブレーション用
品です(図1)。ベースバンドに対するダイレクト・コンバ の機能は、SPI(Serial Peripheral Interface)を介して制御でき
ージョン(DC~6GHzに対応)またはIF(中間周波数)変換 ます。つまり、ソフトウェア・ベースの構成処理により、比類ない性能レベルを容易に達成することが可能です。
RST IF_I ADMV1014
SEN VCC_QUAD
DVDD I_N
SCLK ×4 I_P I_N BG_RBIAS
×4
SDI 90° GND I_P RST
0°
SDO Q_N IF_I VCC_BG
BG_RBIAS2 90°ADMV1013 Q_P GND 0° VCC_LNA_1P5
VCC_DRV IF_Q
IF_Q GND
GND VCC_BG2
Q_P RF_IN
RF VVA2 VVA1 VENV_P
Q_N DET GND
GND
DET VENV_N
(a)ADMV1013のブロック図 (b)ADMV1014のブロック図
図1. ADMV1013(アップコンバータIC)とADMV1014(ダウンコンバータIC)
analog.com/jp
VCC2_DRV SEN
NIC GND
NIC LOP
VCC_VVA LON
VCTRL1 GND
VCTRL2 VCC_QUAD
VCC_AMP2 BG_RBIAS1
SEN2 VCC_BG
VCC_ENV VCC_MIXER
VCC_AMP1 NIC
SDO SDI
VCC_IF_BB SCLK
VDET DVDD
VCC_VGA VCC_MIXER
GND GND
VCTRL LO_P
VCC_VVA LO_N
VCC_LNA_3P3 GND
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2 24GHz~44GHzに対応する高集積度のアップコンバータ/ダウンコンバータ、マイクロ波システムの性能向上と小型化を実現
ADMV1013の詳細 得られた信号はプログラマブルなバンドパス・フィルタに入力
され、不要な逓倍高調波が低減されます。その結果となる信号
ADMV1013は、2つの周波数変換モードを備えています。1つ が、ミキサーの直交位相生成段に供給されます。この構成によ
は、I/Qベースバンド信号からRF信号へのダイレクト・アップ り、ミキサーに注入されるスプリアスが大幅に低減されます。
コンバージョンを実現するモードです。このI/Qモードを使用す 加えて、対応周波数が低い安価なシンセサイザやVCOを選択す
る場合、I/Qベースバンド信号用の差動入力部は、送信用の高速 ることが可能になります。変調されたRF出力は、VVAを挟む2つ
D/Aコンバータ(DAC)のペアによって生成されたDC~6GHz のアンプ段によって増幅されます。ユーザ自身が調整可能なゲ
の信号を受け取ることができます。コモンモード電圧V CMは イン制御範囲は35dBです。また、カスケード接続を行った場合
0V~2.6Vの範囲で設定できるので、ほとんどのDAC製品のイン の最大変換ゲインは23dBです。ADMV1013は、40ピンのLGAパ
ターフェースに対応可能です。アップコンバータのレジスタを ッケージを採用しています(図2)。上記の各種機能によって、
設定することにより、選択したDACのVCMに対してバイアスを簡 卓越した性能、最大限の柔軟性、使いやすさを提供しつつ、必
単に最適化できるため、インターフェース部の設計が簡素化さ 要な外付け部品の点数を最小限に抑えます。そのため、スモー
れます。もう1つのモードでは、直交デジタル・アップコンバー ル・セルの基地局など、マイクロ波を利用する小型のプラット
タによって生成された信号などの複素IF信号からRF信号への単 フォームの実装に非常に適しています。
測波帯アップコンバージョンが実行されます。また、このICに
特有の機能として、I/Qモードでは、Iチャンネル用ミキサーとQ ADMV1014の詳細
チャンネル用ミキサーのDCオフセット誤差をデジタル的に補正
し、RF出力へのLOリークを改善できるようになっています。キ ADMV1013と同様に、ADMV1014のLOパスも、LO用のバッフ
ャリブレーションを実施した後は、最大ゲインのRF出力におい ァ、周波数逓倍器(4倍)、プログラマブルなバンドパス・フ
てLOリークを-45dBmに抑えることが可能です。ダイレクト・ ィルタ、直交位相シフタといった要素で構成されています。但
コンバージョンにおける重要な課題の1つは、I/Qの位相がアン し、ADMV1014はダウンコンバータなので、RFフロントエンド
バランスである場合に、側波帯抑圧(Sideband Suppression) 部にはLNAがあり、その後段にはVVAとアンプが続きます(図1
性能が低下することです。また、ダイレクト・コンバージョ (b))。ゲインの連続的調整範囲は19dBであり、VCTRLピン
ンには、一般に側波帯がマイクロ波の搬送波に近すぎるため、 にDC電圧を印加することで制御します。I/Qモードでは、マイ
フィルタが実用的なレベルで機能しないという問題もありま クロ波からベースバンドDCへのダイレクト・コンバージョン用
す。ADMV1013を採用すれば、レジスタを使ったチューニン 復調器として、ADMV1014を使用することができます。このモ
グによって、I/Qの位相のアンバランスをデジタル的に補正で ードでは、復調後のI/Q信号が各I/Q差動出力部によって増幅さ
きるため、この問題を解決することが可能です。同ICが通常動 れます。それぞれのゲインとVCMは、SPIを介してレジスタによ
作している場合、キャリブレーションを適用しない状態での側 って設定可能です。ADMV1014を使えば、ベースバンド用のA/
波帯抑圧性能は26dBcです。同ICが内蔵するレジスタを使用す Dコンバータ(ADC)のペアに差動信号をDC結合することがで
れば、キャリブレーションを実施した後の側波帯抑圧性能を約 きます。あるいは、ADMV1014により、I/Qの各信号に対応する
36dBcまで改善することができます。どちらの補正機能も、外 シングルエンドのIFポートに向けて、ダウンコンバージョンと
付け回路を追加することなく、SPIを介して利用可能です。な イメージの除去を実施することも可能です。また、どちらのモ
お、I/Qモードでは、I/Qベースバンド・チャンネルに対応する ードでも、SPIを介してI/Q信号の位相と振幅のアンバランスを
各DACの位相バランスを更に調整することで、より高い抑圧性 補正することができます。その結果、ダウンコンバータによる
能を達成することができます。性能の改善に役立つ各種の機能 ベースバンド/IFへの復調時におけるイメージの除去性能を高
により、マイクロ波帯における無線性能を高めつつ、外付けフ められます。24GHz~42GHzの周波数範囲において、このダウ
ィルタの規模を最小限に抑えることが可能になります。 ンコンバータの総カスケード・ノイズ指数は5.5dB、最大変換ゲ
インは17dBです。周波数が帯域の上限である44GHzに近づいて
も、6dBという高いカスケード・ノイズ指数が維持されます。
図2. ADMV1013の評価用ボード。
同ICは6mm×6mmの表面実装パッケージを採用しています。
図3. ADMV1014の評価用ボード。ADMV1013よりも
A D M V 1 0 1 3 は L O 用 の バ ッ フ ァ を 内 蔵 し て い る た め 、 L O 用 やや小さい5mm×5mmのパッケージを採用しています。
に 必 要 な 駆 動 レ ベ ル は わ ず か 0 d B m で す 。 こ の こ と か ら 、
「ADF4372」や「ADF5610」など、電圧制御発振器(VCO)を
備えるシンセサイザICで直接駆動することができます。その結
果、外付け部品の点数を更に減らせるというメリットが得られ
ます。また、内蔵する周波数逓倍器(4倍)により、LO周波数
に対し、必要な搬送波周波数までの逓倍処理が行われます。
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3 24GHz~44GHzに対応する高集積度のアップコンバータ/ダウンコンバータ、マイクロ波システムの性能向上と小型化を実現
ミリ波を使用する5Gシステムの性能向上 ト)は23dBm、ADMV1014のIIP3(入力3次インターセプト・
ポイント)は0dBmです。両ICを併用することにより、高次の
図4に示したのは、28GHzを使用してダウンコンバータの性能 QAMに対応し、データのスループットを高めることができま
を測定した結果です。4つの独立した100MHzのチャンネルを使 す。また、両ICは、衛星/地上局の広帯域通信リンクや、セキ
用し、5G NRに対応する信号を対象としました。チャンネル当 ュアな無線通信、RF試験装置、レーダー・システムなどのアプ
たりの入力電力は-20dBm、変調方式は256QAM(直角位相振 リケーションにも適用可能です。いずれも、優れた直線性、高
幅 変 調 ) で す 。 E V M ( エ ラ ー ・ ベ ク ト ル 振 幅 ) の 値 いイメージ除去性能を備えているため、コンパクトなソリュー
は - 4 0 d B ( 1 % r m s ) で あ り 、 ミ リ 波 を 使 用 す る 5 G の シ ション・サイズ、小さなフォーム・ファクタ、高性能のマイク
ス テ ム で 求 め ら れ る 高 次 変 調 方 式 の 復 調 に 対 応 で き ま ロ波リンクを組み合わせて広帯域に対応する基地局を実現する
す。ADMV1013/ADMV1014は、1GHzを超える帯域幅に対応 ことができます。
します。ADMV1013のOIP3(出力3次インターセプト・ポイン
1.8
1.6
1.4
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0
–45 –40 –35 –30 –25 –20 –15
PIN〔dBm〕
図4. EVM性能の測定値(%rms)と入力電力の関係。
上に示したのは、28GHz/256QAMの条件で取得したコンステレーション・ダイアグラムです。
EVM〔%〕
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著者について オンライン・
James Wong(james.wong@analog.com)は、アナロ サポート・
グ・デバイセズのRF製品マーケティング・マネージャで コミュニティ
す。25年以上にわたり、マーケティングおよびセール
スの管理職を務めてきました。RF回路、アナログ回路、 アナログ・デバイセズのオンライン・サポート・コミュ
システムの設計についても25年以上の経験を有していま ニティに参加すれば、各種の分野を専門とする技術者
す。 との連携を図ることができます。難易度の高い設計上の問題について問い合わせを行ったり、FAQ を参照し
Kasey Chatzopoulos(kasey.chatzopoulos@analog.com たり、ディスカッションに参加したりすることが可能
)は、アナログ・デバイセズのマイクロ波通信グループ です。
に所属する製品アプリケーション・マネージャです。マ
イクロ波に対応する周波数変換IC、RFチューナブル・フ ez.analog.com にアクセス
ィルタ、ビームフォーマ製品を担当しています。2012年
にマサチューセッツ大学ダートマス校で電気工学の学士
号、2017年にマサチューセッツ大学ローウェル校で電気
工学の修士号を取得。2012年にHittite Microwave(現在 *英語版デザイン・ノートはこちらよりご覧いただけます。
はアナログ・デバイセズに統合)に入社しました。製品
技術者として2年間勤務した後、RF/マイクロ波グルー
プの製品/アプリケーション・チーム・リードの職に就
きました。その後、マイクロ波通信グループに異動し、
設計評価マネージャ、製品ライン・マネージャをそれぞ
れ2年間務めました。2019年初頭から現職。
Murtaza Thahirally(murtaza.thahirally@analog.com)
は、アナログ・デバイセズのマイクロ波通信グループに
所属するアプリケーション・エンジニアです。マイクロ
波に対応する周波数変換ICを担当しています。2012年に
ウースター工科大学で電気/コンピュータ工学と経済学
の学士号、2016年にパデュー大学で電気/コンピュータ
工学の修士号を取得。2012年にアナログ・デバイセズに
入社し、RF/マイクロ波グループの製品技術者として3
年間勤務しました。その後、マイクロ波通信グループに
異動し、アプリケーション・エンジニアとして4年間勤
務しています。
本 社 〒105-6891 東京都港区海岸1-16-1 ニューピア竹芝サウスタワービル10F
大阪営業所 〒532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原3-5-36 新大阪トラストタワー10F
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DN21223-6/19