1/4ページ
ダウンロード(531.6Kb)
事前調査における他製品との優位性を感じ採用を決定
【当社のIMUを採用した背景】
・本採用前に実験的にIMUの特性を調査しましたが、ジャイロセンサーからの誤差(安定性)が6°/hrと競合品に比べ非常に小さく、安定した角速度をアルゴリズムの補正なく入手ができました。
記事では導入後の効果や今後の展開についても触れています。
ダウンロードしてご覧ください。
このカタログについて
ドキュメント名 | 【活用事例:千葉工業大学様】ロボティクスにおけるIMUの効果 |
---|---|
ドキュメント種別 | 事例紹介 |
ファイルサイズ | 531.6Kb |
取り扱い企業 | アナログ・デバイセズ株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
この企業の関連カタログ
このカタログの内容
Page1
採用事例
| Share on Twitter | Share on LinkedIn | Email
慣性計測ユニット(IMU)活用事例
ロボティクスにおける IMUの効果
慣性計測ユニット(IMU)に統合された、加速度センサーとジャイロセンサー、大気
圧センサー、磁気センサー、温度センサー。IMUは内部の補正機能により、小型かつ
周辺回路なしに正確なセンシング情報を取得できるアナログ・デバイセズ屈指の製品
です。
未来をつくるロボット開発では、産業分野のみならず、先端的かつ挑戦的な学術分野
においてもアナログ・デバイセズのIMUは重要なセンサーの一つとして採用いただい
ています。 林原 靖男 氏
千葉工業大学 工学部
今回は、実際にアナログ・デバイセズのIMUを導入している千葉工業大学のロボット 未来ロボティクス学科
設計・制御研究室 林原 靖男 教授に、ロボティクスにおけるIMUの効果についてお話 教授 博士(工学)
を伺いました。
自律移動型ロボットの研究を推進 -林原先生の研究室では
実践的な取り組みで人材を輩出 どのような研究をしているのでか?
私の「ロボット設計・制御研究室」では、ラボ内の限られた空
-千葉工業大学の未来ロボティクス学科について 間だけではなく、実際のフィールドにおいても安定して動作す
教えてください。 るロボットの研究・開発を行っています。自律移動ロボットに
さまざまな分野に応用されるロボットおよびロボティクス(ロ よってサッカーゲームを競う「ロボカップ」への取り組みもそ
ボット工学)は、これからの産業において重要な役割を担うと の一環です。
期待されています。千葉工業大学では2006年に「未来ロボティ
クス学科」を開設しました。 ロボカップ2018年の世界大会のテクニカル・チャレンジ部門に
て7連覇を達成しました。
学部1年次からロボットの開発に取り組んでもらうなど実践的
なカリキュラムを特徴とした学科で、ロボティクス領域を開拓 ここ数年は、人間とロボットが共存する未来をテーマにした技
できる人材を育成しています。 術の確立を目的に、「つくばチャレンジ」という、茨城県つくば
市内の遊歩道など、人間が利用するコースを移動する目的の技
術競技会にも参加しています。
2017年11月の「つくばチャレンジ2017」では本研究室の
「ORNE-α」(オーン・アルファ)と「ORNE-β」(オーン・ベー
タ)という2台の自律走行ロボットを開発し、両ロボットともに
2kmにも及ぶコースの完走に成功しています。
IMU「ADIS16480」を搭載したロボット「ORNE」
ロボット設計・制御研究室の皆さん
analog.com/jp
Page2
2 慣性計測ユニット(IMU)活用事例
自律走行ロボットに、 ます。マルチパスが発生すると、大きな位置ずれが発生し、まっ
アナログ・デバイセズの高性能・高精度センサー たく違う位置を突然示してしまうという課題があります。
慣性計測ユニット(IMU)を採用
また、方向の把握に、ジャイロセンサーではなく、地磁気に基
-つくばチャレンジ 2017に出場した づいた磁気絶対方位を検出する磁気センサーも試行しましたが、
「ORNE」について紹介してください。 車両の近くや橋に埋め込まれた鉄骨等による影響から磁気のず
つくばチャレンジのように、人間と同じ空間を自律的に移動す れが発生し、磁気センサー単体で方向を推定することが困難で
るロボットには、車輪やモーターなどの駆動部はもちろんのこ した。
と、自分自身の位置や向きを知る位置推定機能、周囲の状況を
把握するための物体検出機能、周辺の歩行者や自転車に対して 結果として現在、私たちの研究室では、アナログ・デバイセズ
安全を確保するための検知機能や非常停止機能、それらを制御 のIMUを利用し、内蔵されたジャイロセンサーからの回転角速
するソフトウェアに加え、すべての土台となる精密なセンシン 度を取得し回転角を生成、オドメトリを構築しています。現在、
グが必要となります。 本方式が指定コースを走行させる位置推定に最適と判断してい
ます。なお、「ORNE」にはアナログ・デバイセズの10自由度
こうしたセンサーと、駆動部、判断機能を統合したロボットが (10DoF)のIMU「ADIS16480」を採用しました(3軸ジャイロ
「ORNE」です。 センサーと3軸加速度センサーのほか3軸磁力メーターと圧力セ
ンサーを統合したデバイス)。
-ロボットに搭載したセンサーの種類と
それぞれの役割は何でしょうか。 バイアス安定性が高く補正が不要に
「ORNE」は、精密で高信頼なデータを採取するためのセンサー 正確な地図作成と自己位置推定を実現
として、アナログ・デバイセズの慣性計測ユニット(IMU)を
採用しています。ロボットの自律走行には、現在の位置を推定 -アナログ・デバイセズの慣性計測ユニット(IMU)を
するオドメトリ(odometry:自己位置推定)手法が必要であり、 採用した理由やきっかけを教えてください。
本手法の入力として車輪の回転角(進行速度)とロボットの向 ロボットの研究開発においては、いかにして特性の良い部品を
きを利用しています。 入手できるかが重要なファクターです。さまざまなベンダーの
製品情報を常にウォッチしており、その中で、アナログ・デバ
イセズの情報を目にして同社のIMUを知りました。
本採用に至る前に実験的にIMUの特性を調査しましたが、アナ
ログ・デバイセズのIMU「 ADIS16480」は、ジャイロセンサー
からの誤差(安定性)が6°/hrと競合品に比べ非常に小さく、安
定した角速度をアルゴリズムの補正なく入手できます。これは
「ORNE」におけるIMUの役割 非常に重要な精度で、角度の算出には角速度を積分し生成しま
すので、角速度誤差は、積み上げる大きな角度の誤差となります。
車輪の回転角はロータリーエンコーダーが利用できますが、路面
の起伏や街路樹の葉などで車輪が空転することがあり、このよ 「ADIS16480」は我々が求めている精度を満たしていましたの
うなエラーはロータリーエンコーダーのみでは観測できません。 で、つくばチャレンジに向けた「ORNE」開発に採用すること
を決めました。
そこで私たちは慣性計測ユニット(IMU)を採用し、ロボット
の回転角速度を取得、車輪の空転によるロボットの進路がずれ
を常時監視することで、位置の計算にフィードバック、オドメ
トリを補正することができます。
また、ロボットの周辺に障害物がないことを確認するため、周
囲を半導体レーザーでスキャンする測域センサーも搭載してい
ます。測域センサーにより歩行者も回避可能です。この回避時
の旋回運動もIMUで測定しています。すべてのセンサーの情報
はPCに集約し、モータードライバの制御に利用しています。
-位置の推定にはGNSS(GPS)を利用していますか?
GNSS(GPS)は広大な空間では有効ですが、ビルやマンショ
ンが近くにあると電波が反射しマルチパスという現象が発生し 「ORNE」におけるIMUの役割
Page3
3 慣性計測ユニット(IMU)活用事例
-アナログ・デバイセズのIMUを採用したこと
でどのようなメリットが得られましたか?
つくばチャレンジの試走結果からも分かるように、従来使って
いたジャイロセンサーに比べてかなり正確な地図が作成できる
ようになったのは大きな躍進です(下図)。IMUとオドメトリ
方式を組み合わせることで、完走に十分な精度が簡単に実現で
きました。
加えて、アナログ・デバイセズのIMUは、出力を補正するフィ
ルタ機能がIMU自体に内蔵されているため、値を安心して利用
可能で、ソフトウェア開発の負担も大きく低減できました。
もちろん、自律走行中も前方に歩行者などを検知した場合、
「ORNE」は回避のために旋回する行動を採用していますが、
こういった自律走行時も角度の誤差がほとんど発生しないた
め、安心して回避行動を実装できますし、安全性を向上させる
ことができました。チームによっては歩行者が立ち去るまで待
つ、といった作戦を採用しているところもあります。
【IMU有で生成した地図】
【IMU無しで生成した地図】
Page4
人とロボットが共存する社会に向けて -アナログ・デバイセズに対する
ロボット技術の深更に取り組む 期待や評価はいかがでしょうか。
-アナログ・デバイセズ製の他IMUを ロボット開発ではソフトウェア基盤として「ROS」(Robot
利用したことはありましたか? Operating System)を搭載することが一般的ですが、アナロ
「ロボカップ世界大会2016」のロボットには、3軸ジャイロセン グ・デバイセズのIMUはROSにデバイスドライバが準備されて
サーと3軸加速度センサーを備えたアナログ・デバイセズ6自由 おり、多くのロボット研究者がIMUで周辺情報を手軽に入手し、
度(6DoF)のIMU「ADIS16375」を採用しました[*1]。 活用できるようになったと感じます。
なお、アナログ・デバイセズのIMUはシリアル通信で簡単にセ 今後もIMUとロボットの親和性をさらに高める製品やソフト
ンサーの値を取得できますので、ロボット開発の中でIMUを ウェア(デバイスドライバを含む)の登場を楽しみにしています。
6DoFのIMU「ADIS16375」 か ら10DoFのIMU「ADIS16480」
へ交換を行いましたが、ほとんどソフトウェア開発は発生せず、 -今後の展望をお聞かせください。
簡単に載せ替えができました。 人工知能やロボティクスの進化を背景にこれからの20年で人間
の様々な活動をサポートしていくと言われています。こうした
流れから、社会はさらに効率的になり、人の手が届かなかった
新しい課題に挑戦できるようになると感じています。
そうした未来の自律型ロボットは、つくばチャレンジでも設定
されているように、歩行者や自転車が周りにいる環境の中、た
とえば横断歩道で待つ、自動ドアを通って商業施設に入る、と
いった多様な状況にも対応する必要がでてきます。人と同じ活
動範囲となりますので、ロボティクスは現在多くの注目を浴び
ている先進運転支援システム(ADAS)と同様、今後も複雑化
していくでしょう。私たちの研究室、は人とロボットが共存す
ロボット設計・制御研究室で開発した「ADIS16375」を搭載したロボット る社会の実現を目指して引き続き研究に取り組むとともに、未
来のロボティクスを担う人材の輩出に努めていきます。
-本日は貴重なお話をありがとうございました。
「ORNE」とROSの連携図
本 社 〒105-6891 東京都港区海岸1-16-1 ニューピア竹芝サウスタワービル10F
大阪営業所 〒532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原3-5-36 新大阪トラストタワー10F
名古屋営業所 〒451-6040 愛知県名古屋市西区牛島町6-1 名古屋ルーセントタワー38F
©2019 Analog Devices, Inc. All rights reserved.
本紙記載の商標および登録商標は、
各社の所有に属します。
Ahead of What’s Possible は
アナログ・デバイセズの商標です。 www.analog.com/jp
IMUITCHIBAJP-0-06/19