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高電圧/大電流に対応する降圧バッテリ・チャージャ「LTC4091」のご紹介。バックアップ用の PowerPath 機能や、サーマル・レギュレーションをはじめとする各種保護機能も装備。
同 IC は、車両追跡のアプリケーションに向けたコンパクトかつ強力で柔軟性の高いシングルチップのソリューションです。
これを利用することにより、設計者の作業を簡素化することが可能になります。
特長
・主電源とリチウムイオン・バッテリ間䛾シームレスな遷移
・適応出力制御付き、2A高電圧降圧レギュレータ
・広い入力電圧範囲: 6V~36V (絶対最大定格60V)
・出力電圧: 最大4.45V
・熱特性が改善された、高さの低い(0.75mm) 3mm × 6mm 22ピンDFNパッケージ
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このカタログについて
ドキュメント名 | 車両追跡のアプリケーションに向けたコンパクトかつ強力で柔軟性の高いシングルチップ「LTC4091」 |
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ドキュメント種別 | 製品カタログ |
ファイルサイズ | 465.3Kb |
登録カテゴリ | |
取り扱い企業 | アナログ・デバイセズ株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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車両追跡システム――
いつでも、どこでも、何があっても
著者: Chris Murphy
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背景 あるいはその場所から退去する時に警告を発することもできま
車両追跡システムとは、1 台の車両の監視、または複数の車 す。こうしたシステムは、盗難の防止や、盗難車の回収にも役
両全体(フリート)の監視を行うためのシステムのことです。こ 立ちます。アクティブ・トラッカーで使用するデバイスは、車両
の種のシステムでは、対象となる自動車の位置情報を取得す の追跡に GPS を利用します。当然のことながら、そのデバイ
ることで自動追跡を実現します。そのため、データ収集(必要 スはパッシブ・トラッカー向けのものよりも高額であり、サービス
な場合はデータ伝送も)を行うためのハードウェアとソフトウェ の利用料金も高めに設定されます。
アで構成されます。Globa l Marke t Ins igh t s の調査結果に
2015 一方、パッシブ・トラッカーはそれよりもコストを安く抑えられまよると、フリート管理の世界市場の規模は、 年の時点で
80 す。また、コンパクトなサイズで実現できるため、目立たないよ億米ドル(約 8400 億円)、2022 年までには 220 億 米ドル
2 .3 うに車両に搭載することが可能です。欠点は保存できるデータ(約 兆円)を超える見込みだと言います。また、2016 年~
2023 CAGR 量に限りがあることです。パッシブ・トラッカーでは、データを遠年の (年平均成長率)は 20 % を超えると予想
隔に送信するのではなく、装置上に保存します。情報を確認す
されています。現在、中南米、中東、アフリカなどの地域では、
るには、トラッカーを車両から取り外してコンピュータに接続す
商用車の需要が高まっています。このことは、同市場が成長す
る必要があります。このタイプのシステムは、個人が業務上の
る機会につながります。一方、欧州や北米などの先進的な地域
IoT Internet of Things 何らかの目的に応じて走行距離を記録したい場合や、企業がでは、 ( )に対応する技術が車両に適用
車両の不正使用を減らしたい場合などに適しています。また、
されることで、車両追跡システムの普及が進むと見られていま
車両の追跡によって人間の行動を監視する目的でも使用され
す。ただ、実際には、そのような車両追跡システムの実現には
ます(探偵の仕事など)。パッシブ・トラッカーは、途中でフィー
かなりのコストがかかります。そのことが、普及の進行を遅らせ
ドバックを必要とすることがなく、装置に保存されたデータを定
る要因になるかもしれません。他方、アジア太平洋地域では、
期的に確認することが予定されている用途に適しています。
日本、インド、中国によって、上記の期間内に車両追跡システ
ムの市場規模は大きく成長すると予想されています。これらの どちらの種類のトラッカーも、通常は可搬型の比較的小型な
国では数多くの商用車が使われているため、車両追跡システ 装置として実現されます。また、バッテリ駆動で動作すること
ムに対する潜在的なニーズも大きいと考えられます。 に加え、電源が失われた場合でもデータを保持できるように
するためのバックアップ機能が必要になります。車載システム
アクティブ・トラッカーとパッシブ・トラッカー では、バッテリ(一般的にはシングルセルのリチウムイオン・バ
車両追跡システムには、アクティブ・トラッカーとパッシブ・トラ ッテリ)の充電に高い電圧と多くの電流が必要になります。そ
ッカーという 2 つの形態があります。データの収集方法はどちら のため、スイッチ・モードのチャージャの利用が適しています。
も同じで、精度も同等です。両者の違いは、リアルタイム性の有 リニア方式のバッテリ・チャージャ IC よりも充電効率が高く、
無という点にあります。アクティブ・トラッカーは、リアルタイム・ト 電力の損失の結果として生成される熱が少ないからです。一
ラッカーとも呼ばれます。取得したデータを、衛星またはセル 般に、組み込み車載アプリケーションでは、入力電圧は最大
ラ・ネットワークを介して即座に伝送することにより、車両の位 3 0 V です。場合によってはそれ以上になる例もあります。そ
置を瞬時に特定することができるからです。その結果は、コン のため、GPS をベースとする車両追跡システムの場合、シン
ピュータ画面上にリアルタイムに表示することができます。この グルセルのリチウムイオン・バッテリ(標準電圧は 3 .7 V)向け
ことから、アクティブ・トラッカーは、配送効率の向上や、車両を に標準的に使用されている 12 V 対応のチャージャには、非
使って業務を行う従業員の監視を目的とする企業にとって、最 常に高い入力電圧に対処するための保護機能を追加するべ
適な選択肢となります。RMT によれば、ジオフェンス機能(力 きです。そうした入力電圧は、バッテリが正常な動作から逸脱
場のような機能だと考えてください)も備えるアクティブ・トラッカ した場合に電圧トランジェントとして現れます。加えて、何らか
ーであれば、車両があらかじめ定められた場所に進入するか、 のバックアップ機能も用意することが理想です。
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バッテリ・チャージャ IC の設計上の問題 アナログ・デバイセズの「LTC4091」は、前述したような具体的
従来のリニア方式のバッテリ・チャージャには、次のような特徴 なニーズに応える製品です。同 IC は、リチウムイオン・バッテ
がありました。コンパクトであること、シンプルであること、比較 リ向けの完全なバックアップ管理システムとして実現されてい
的安価であることです。その一方で、次のような欠点も存在し ます。主電源が故障した場合でも、3.45 V ~ 4 .45 V の電源
ます。すなわち、入力電圧とバッテリへの供給電圧の範囲が レールを長時間にわたって維持することが可能です。また、36
限られること、消費電流が比較的多いこと、過度に電力を消費 V の入力電圧に対応するモノリシック型の降圧コンバータを採
(熱を生成)すること、充電を終了するためのアルゴリズムに制 用しており、適応型の出力制御機能を備えています。システム
約があること、効率が比較的低いことです。 の負荷に電力を供給するとともに、降圧処理によって得た出力
を使い、高い効率でバッテリを充電することができます。外部電
それに対し、スイッチ・モードのバッテリ・チャージャは、そのト 源を利用できる場合には、合計で最大 2 .5 A の出力電流を供
ポロジや柔軟性、マルチケミストリ対応の充電機能に特徴があ 給することが可能です。加えて、4.1 V または 4 .2 V のシング
ります。また、充電効率が高く、熱を最小限に抑えられるので、 ルセルのリチウムイオン・バッテリに対し、最大 1 .5 A の充電
高速な充電が可能です。さらに、動作電圧範囲が広いというメ 電流を供給できます。一方、入力となる主電源が故障して負
リットもあるため、非常によく使われています。ただ、当然のこ 荷に電力を供給できなくなった場合には、バックアップ用のリ
とながら欠点も存在します。スイッチング・チャージャの欠点と チウムイオン・バッテリから内部ダイオードを介し、システムの
しては、価格が比較的高いこと、インダクタを用いる複雑な設 負荷に対して最大 4 A の電流を供給することができます。外
計が必要になること、ノイズが生成される可能性があること、リ 付けのダイオード/トランジスタを使用すれば、ほぼ制限が
ニア方式よりもフットプリントが大きいことなどが挙げられます。 ないレベルで電流を供給可能です。影響を受けやすい下流
それでも、最新の鉛蓄電池、ワイヤレス充電、エナジー・ハー (後段)の負荷を保護するために、最大出力負荷電圧は 4 .45
ベスティング、太陽光発電、リモート・センサー、組み込み車 V に制限されています。電源が故障した際には、PowerPa th
載アプリケーションの大多数には、スイッチ・モードのチャージ 制御機能により、入力電源とバックアップ電源の間をシーム
ャが採用されています。なぜなら、上記のメリットが高く評価さ レスに切り替えることができます。さらに、入力が短絡した際に
れているからです。 は、逆電流を遮断することも可能です。この IC を適用すべき
標準的なアプリケーションとしては、フリート/アセットの追跡、
従来、バッテリ駆動のトラッカーに使われるバックアップ用の 車載 GPS データ・ロガー、車載テレマティクス・システム、セ
電源管理システムは、複数の IC、高電圧に対応する降圧レ キュリティ・システム、通信システム、産業用バックアップ・シ
ギュレータ、バッテリ・チャージャ、多様なディスクリート部品 ステムなどが挙げられます。
で構成されていました。つまり、決してコンパクトなものではあ
りませんでした。そのため、初期の車両追跡システムではあま LTC4091 の絶対最大定格は 60 Vであり、入力過電圧に対
り小型化は実現できていませんでした。車両追跡システムの する保護機能も備えています。そのため、大きな入力電圧トラ
標準的なアプリケーションでは、車載バッテリに加え、シング ンジェントに耐えることができます。同 IC のバッテリ・チャー
ルセルのリチウムイオン・バッテリをストレージ用とバックアッ ジャは、リチウムイオン・バッテリのバックアップ用に最適化さ
プ用に使用します。 れた 2 種類の充電電圧に対応します。1つは標準的な 4 .2 V
であり、もう1つは 4 .1 V です。後者は、充放電サイクル寿命を
車両追跡システムにおいて、より集積度の高い電源管理ソリュ 延ばす代わりにバッテリを利用可能な時間を短くするという使い
ーションが求められるのはなぜでしょうか。その理由としては、 方に対応するオプションの電圧です。どちらを使用するかは、
まずトラッカー自体のサイズを縮小したいというニーズの存在 ピンの設定により選択できます。この他に、起動する際や過負
が挙げられます。この市場では、トラッカーは小さければ小さい 荷が生じた際に出力電流を制御するためのソフトスタート、周
ほど優れていると言えるのです。また、IC を電圧トランジェント 波数フォールドバック、トリクル充電、自動再充電、バッテリ電
から保護しつつ、バッテリを安全に充電したいというニーズもあ 圧が低下した際のプリチャージ、タイマーによる充電の終了、
ります。システムの電源が失われたり故障したりした場合のバッ サーマル・レギュレーション、充電時の温度を制限するための
クアップを実現し、約 4 .45 V 以下という比較的低い電源電圧 サーミスタ・ピンといった特徴を備えています。
を GPRS(Genera l Packet Radio Serv ice)のチップセットに
供給する必要があります。 LTC4091 のパッケージは、3 mm × 6 mm の 22 ピンXDFN
です。その高さは 0 .75 mm に抑えられています。また、裏面の
電源のバックアップ管理 金属パッドによって優れた熱性能が実現されています。動作温
度範囲は -40℃X~ 125℃です。図 1 に、標準的なアプリケー
上述した目的を満たす充電/バックアップ管理向けのソリュ ション回路の例を示しました。
ーションは、高い集積度に加え、以下に挙げる性質を備えて
いる必要があります。
X X 高い効率を実現する同期式の降圧トポロジ 0.47 µF
6.8 µH
X X さまざまな入力電圧源に対応可能な広い入力電圧範囲
車載電源からの BOOST SW
と、大きな電圧トランジェントに対応可能な保護機能 入力 V 最大 3.3 µFIN
6 V ~ 36 V 4.7 µF 2 A
X GPRS のチップセットをサポートするためのバッテリ充電 HVOUT
HVPR
電圧への対応 LTC4091 4.99
kΩ 負荷
X X 充電終了機能を内蔵していることから得られるシンプルで OUT 最大68 µF 4.45 V
自律的な動作(マイクロコントローラが不要であること) BAT
X X 電源が故障した際、入力電源とバックアップ電源の間を VC TIMER RT PROG GND + リチウムイオン・バッテリ
シームレスに切り替えるXPowerPath 制御。入力の短絡が 15 k Ω
40.2 52.3
生じた場合には逆電流を遮断する必要もある 220 pF 0.1 µF kΩ kΩ
X X 入力が存在しない場合や故障した場合に、システムの
負荷電力に対応するためのバッテリ・バックアップ機能
X X スペースの制約に対応可能な小型/低背のソリューション 図 1 . LT C 4 0 9 1 の標準的なアプリケーション回路
X X 熱性能と実装効率を高める高度なパッケージ技術
2 Analog Dialogue 52-03
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サーマル・レギュレーションによる保護 車載電源からの
LTC4091 IC 入力
VIN
では、同 や周辺部品が熱によって損傷することを
100 k Ω 140 k Ω
防ぐために、ダイの温度が約 105 ℃まで上昇すると、内部の熱 CMHZ4692 RUN/SS
帰還ループによって充電電流の設定値が自動的に引き下げら 1/2 MMDT5551 330 nF
れます。このサーマル・レギュレーションにより、LTC4091 は高 100 k Ω
電圧での動作や高い周囲温度に起因する過度の温度上昇から 1/2 MMDT5551
の保護を実現しています。このことから、ユーザーは、LTC4091 49.9 k Ω
や外付け部品に損傷を及ぼすことなく、電力量に対するマージ GND
ンを小さく抑える方向で回路基板を設計することができます。
サーマル・レギュレーションのループがもたらすメリットは、ワー
ストケースの条件ではなく、現実の条件に基づいて充電電流 図 2 . コールド・クランクのライドスルー回路
を設定できる点にあります。また、ワーストケースの条件が発
生した場合には、バッテリ・チャージャによって自動的に電流 まとめ
が減少することが保証されます。
車両/フリートの追跡システムは、急速に普及しつつあります。
また、最新のトラッカーは、より小型化される傾向にあります。そ
コールド・クランクのライドスルー れだけでなく、リアルタイムに追跡を行うためのデータ伝送機能
車載アプリケーションでは、コールド・クランクが発生した時な を内蔵する製品も増加しています。加えて、バックアップ機能も
どに、電源電圧が一時的に大きく低下する状態に陥ります。 追加されるようになりました。さらには、システムが備える GPRS
そうすると、高電圧を前提とするスイッチング・レギュレータの のチップセットに電力を供給するための低電圧出力にも対応す
制御が効かなくなり、V C の電圧が過度に上昇します。その結 るようになりました。アナログ・デバイセズの LTC4091 は、高
果、V I N が回復した際、出力に過大なオーバーシュートが生 電圧/大電流に対応する降圧バッテリ・チャージャです。バッ
じるおそれがあります。このオーバーシュートが発生しないよう クアップ用のX PowerPa th 機能や、サーマル・レギュレーショ
にするには、RUN/SS ピンを介して LTC4091 のソフトスター ンをはじめとする各種保護機能も備えています。同 IC は、車
ト回路をリセットする必要があります。図 2 の回路は、このオー 両追跡のアプリケーションに向けたコンパクトかつ強力で柔軟
バーシュートの発生を防ぐためのものです。電圧が低下したこ 性の高いシングルチップのソリューションです。これを利用する
とを自動的に検出し、RUN/SS ピンを使ってソフトスタート機 ことにより、設計者の作業を簡素化することが可能になります。
能を再起動します。
Steve Knoth
著者 :
S teve Knoth(s teve .knoth@analog .com)は、アナログ・デバイセズの Power
by Linear TM グループに所属するシニア製品マーケティング・エンジニアです。
すべての電源管理 IC(PMIC)、L D O(低ドロップアウト)レギュレータ、バッテ
リ・チャージャ、チャージ・ポンプ、チャージ・ポンプを用いた LED ドライバ、ス
ーパーキャパシタ用のチャージャ、低電圧対応のモノリシック型スイッチング・
レギュレータ、理想ダイオード・デバイスを担当しています。2004 年に L inea r
Techno logy(現在はアナログ・デバイセズ傘下)に入社しました。1990 年から
Linea r Techno logyに入社するまでの間には、Micro Power Sys t ems、アナ
ログ・デバイセズ、M i c r e l S e m i c o n d u c t o r において、マーケティングや製品
エンジニアリング関連のさまざまな職務を担当しました。サンノゼ州立大学にお
いて、1988 年に電気工学の学士号、1995 年に物理学の修士号を取得しまし
た。2000 年にはフェニックス大学で技術管理分野の経営学修士号も取得して
います。プライベートでは、子供たちとの時間を楽しむとともに、ピンボールやア
ーケード・ゲーム、マッスルカーなどにも興じています。もう 1 つの趣味は、ビン
テージ・トイや映画/スポーツ/自動車に関する記念グッズの売買/収集を行
うことです。
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