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インテリジェントなフィールド計測器 - インダストリ4.0を見据えたスマートな設計

ホワイトペーパー

一般的に使用されているフィールド計測器を基にして開発【スマート・トランスミッタ】

著者: Christoph Käemmerer Analog Devices, Inc.

これまで、人類は絶えず更なる高みを目指し続けてきました。その成果として、新たな技術や産業が続々と生み出されました。なかでも、技術史に残る大躍進を達成し、マイルストーンを刻んだと言えるものは、産業革命と呼ばれています。そして、いま私たちは、インダストリ4.0という新たなステージに立っています。
これまでに、人類は3度の産業革命を成し遂げてきました。第1次の産業革命では、蒸気機関や水力を利用して生産が行われるようになりました。第2次の産業革命では、電力を用いた大量生産が実現されました。第3次の産業革命では、多くの事物がコンピュータ化されました。そして、現在、第4次の産業革命として、工場のデジタル・オートメーション化に対して大きな注目が集まっています。デジタル・オートメーションとは、自動制御によって様々な作業や処理の効率を高めることを指しています。これは、企業のあらゆる分野に導入されています。

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このカタログについて

ドキュメント名 インテリジェントなフィールド計測器 - インダストリ4.0を見据えたスマートな設計
ドキュメント種別 ホワイトペーパー
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登録カテゴリ
取り扱い企業 アナログ・デバイセズ株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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技術記事 | Share on Twitter | Share on LinkedIn | Email インテリジェントなフィールド計測器―― インダストリ4.0を見据えたスマートな設計 著者: Christoph Käemmerer Analog Devices, Inc. これまで、人類は絶えず更なる高みを目指し続けてきました。 スマート・トランスミッタは、今日、一般的に使用されている その成果として、新たな技術や産業が続々と生み出されまし フィールド計測器を基にして開発されたものです。スマート・ た。なかでも、技術史に残る大躍進を達成し、マイルストーン トランスミッタについては、純粋なループ受電を利用するか、 を刻んだと言えるものは、産業革命と呼ばれています。そし 補助エネルギーを使用する追加の電源から電力を得るインテ て、いま私たちは、インダストリ4.0という新たなステージに立 リジェントなフィールド計測器だと考えればよいでしょう。ス っています。 マート・トランスミッタは、インテリジェンス化に必要なソフ これまでに、人類は3度の産業革命を成し遂げてきました。第1 トウェアを実行するマイクロプロセッサなど、様々なコンポー 次の産業革命では、蒸気機関や水力を利用して生産が行われる ネントを搭載します。ただ、フィールド計測器のインテリジェ ようになりました。第2次の産業革命では、電力を用いた大量 ンス化は、マイクロコントローラのソフトウェアでしか実現で 生産が実現されました。第3次の産業革命では、多くの事物がコ きないというわけではありません。マイクロコントローラでそ ンピュータ化されました。そして、現在、第4次の産業革命と れ以外の処理を担うソフトウェアを追加できるように、診断な して、工場のデジタル・オートメーション化に対して大きな注 どの安全機能は、他の半導体モジュール(例えばA/Dコンバー 目が集まっています。デジタル・オートメーションとは、自動 タ)に実装することも可能です。通常、スマート・トランスミ 制御によって様々な作業や処理の効率を高めることを指してい ッタには、標準的な4~20mAの電流ループが用いられます。 ます。これは、企業のあらゆる分野に導入されています。そう それによって、トランスミッタに許される最大消費電力が決ま した制御を製造分野に適用すれば、予防保全の実現が可能にな ります。結果として、個々のコンポーネントに割り当てられる り、生産性と可用性を高めることができます。一連の工程が完 消費電力の量は、かなり少なく抑えられます。いわゆる3.2mA 全にネットワークに接続されている状態で進められるようにな の低アラーム電流を使用する場合、上限は3.2mAとなります。 れば、供給ルートの計画をより適切に策定し、貯蔵/保管にか スマート・トランスミッタのトレンドとしては、消費電力の削 かるコストを削減して、利用率の改善を保証することが可能に 減、実装面積の縮小、高機能化、高性能化、安全性の強化、予 なります。あらゆる事柄に継続的な稼働が求められる現代にお 防保全への対応などがあります(図1)。 いて、機械にダウンタイムが生じると、高い代償を支払うこと になります。工場をネットワークに接続することで、計画の策 定が容易になり、生産の中断を回避できるようになります。 消費電力の削減と インダストリ4.0において重視されるのは、新規に開発するもの 実装面積の縮小 高性能化 だけではありません。デジタル化された工場への投資をできる だけ短い期間で償却するためには、既存のインフラの継続的な 利用/拡張がポイントになります。インダストリ4.0では、コス トの観点から、このことも重視されるのです。スマート・ファ クトリの運営者にとって、取得価格(低いことが望ましい)と インダストリ4.0に向けた 大掛かりな構造変更(ないことが望ましい)は、費用便益分析 予防保全 スマート・トランスミッタ HART通信とループ給電のトレンド において評価しなければならない重要な基準です。スマート・ ファクトリを実現するための主要な要素としては、インテリジ ェンスを備えたフィールド計測器、つまりはスマート・トラン スミッタが挙げられます。それによって、工場の監視/診断が 可能になり、新たに追加するフィールド計測器とのネットワー 機能の拡張と ク接続が容易になります。そうしたスマート・トランスミッタ 安全性の強化 インテリジェンスの向上 を工場全体に分散配備し、様々なセンサーを接続することで、 それまで監視できていなかった部品の状態を把握できるように なります。スマート・トランスミッタは汎用的でインテリジェ ントなものであり、インダストリ4.0の基本になる要素です。次 のセクションでは、測温抵抗体、熱電対、圧力センサーといっ た多様なセンサーと共に使用できるスマート・トランスミッタ 図1. インダストリ4.0に向けた について詳しく説明します。 スマート・トランスミッタのトレンド analog.com/jp
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2 インテリジェントなフィールド計測器――インダストリ4.0を見据えたスマートな設計 リニア・レギュレータ 101101 101101 101101 センサー アンプ ADC アイソレータ マイクロコントローラ DAC HARTに対応する 4~20mAの 電流ループ 信号処理 HARTモデム プロセッサ、アナログ回路とのインターフェース 図2.Xスマート・トランスミッタのブロック図 図2に示したのは、標準的なスマート・トランスミッタのシグ XX 過電圧/低電圧が発生しているか否かの検証XXXXXXXXXXXXXX ナル・チェーンです。計測には、センサーとA/Dコンバータ (ADC)が使われます。多くの場合、ADCはアナログ・フロ こうした予防措置により、安全規格への準拠が容易になりま ント・エンドとアナログ前処理ユニットで構成されます。ADC す。それだけでなく、HARTプロトコルを介して送信された情報 から出力されるデジタル信号は、絶縁バリアを介して、マイク を使用することで、スマート・トランスミッタに対する保守作 ロプロセッサ、インターフェースへと引き渡されます。現在、 業を時間的な余裕をもって計画することができます。結果とし プラントのオートメーション機器では、4~20mAのインター て可用性が高まり、保守の要件が緩和されます。このように、 フェースを利用した2線式のソリューションが一般的に用いら インダストリ4.0では、大幅な効率の改善がもたらされます。 れています。その種のソリューションには、D/Aコンバータ フィールド計測器では、絶縁も重要な要素になります。不適切 (DAC)が必要です。HART(Highway Addressable Remote な絶縁は、グラウンド・ループや過電圧を引き起こします。そ Transducer)プロトコルは、インターフェースを双方向に使用 の結果、フィールド計測器だけでなく、2線式の接続で送信を行 可能にします。制御室もHARTに対応していれば、HARTプロト うPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)も破損す コルを介してより複雑な処理に向けた送信が行えるので、フィ るおそれがあります。一方で、適切な絶縁は、ループから受電 ールド計測器の機能をより有効に活用することが可能になりま しているフィールド計測器に対する電流制限の妨げになること す。 がよくあります。この例では、デジタル・アイソレータとして 以下では、有用かつ小型なものになるように設計した回路例を 「ADuM1441」を使っています。データ・レートが低い場合に 示した上で、各コンポーネントの役割を詳しく説明します。図3 は、必要な消費電力が従来のソリューションよりもはるかに少 に示したのがその回路例です。この回路は、高精度かつ低消費 なくなるので、所定の消費電力の範囲内で適切に絶縁を実現す 電力であることを特徴とするアナログ・デバイセズの製品を使 ることができます。 って構成されています。インダストリ4.0のすべての要件を満た 図3の回路において、AD7124とADuM1441に並ぶもう1つの重 すように設計されています。 要な構成要素はマイクロコントローラです。これについては、 この回路では、センサーがADCに接続されています。ここでは 「ADuCM3027」や「ADuCM3029」のようなARM ®ベースの製 ADCとして、分解能が24ビットのシグマ・デルタ(ΣΔ)型の 品が一般的に使用されます。ADuCM3027/ADuCM3029は、ア ADC「AD7124」を使用しています。同ICは集積度が高く、外付 クティブ電流が38μA/MHz未満なので、スマート・トランスミ けの計装アンプもオペアンプも必要としません。つまり、アナ ッタに最適です。ARMベースのマイクロコントローラは広く使 ログ・フロント・エンドが極めて小さい面積で実装されている われているので、安全に関連するアプリケーションにも適して ということです。また、様々なセンサーに対応する4系統または います。ADuCM3027/ADuCM3029は、AES-128/AES-256によ 8系統の差動入力を備えており、各種の設計に柔軟に対応するこ る暗号化機能も搭載しているので、セキュリティ機能の強化を とができます。加えて、受動的な温度センサーなどと組み合わ 図ることができます。これらのマイクロコントローラ上で稼働 せる際に必須の要素となるプログラマブル電源を内蔵していま するスマート・ソフトウェアをプログラミングすれば、診断機 す。更に、3種のパワー・モードを備えていることから、消費電 能を実現できます。例えば、スマート・トランスミッタから正 力の面で非常に柔軟な設計を行うことが可能になります。 確な測定値が得られるように、AD7124のキャリブレーションを実施するといった具合です。 精度と出力データ・レートは、選択するパワー・モードによっ て決まります。例えば、3.2mAまでに制限された電源でスマー HARTプロトコルを採用すれば、インフラに対して大きな要件 ト・トランスミッタを動作させ、より高性能なマイクロプロセ を課すことなく、フィールド計測器をスマートに設計すること ッサや追加のセンサーを接続して並列に測定を行うことも可能 ができます。HARTプロトコルは、4~20mAの電流ループを介 です。また、AD7124は、以下のような様々な診断機能を搭載 して使用できますが、それにはHARTスレーブとHARTマスタが しています。 必要です。HARTでは、ユーザの手によってフィールド計測器とPLCの間でデジタル接続を確立することができます。つまり、 XX 有効なレジスタに対する読み出し/書き込みを、例外を発生させ 制御室とフィールド計測器の間でスマートな接続を実現できま ることなく実施できるかXXXXXX す。HARTを利用するには、HART対応のDACに接続されたHART XX レジスタから有効なデータのみを読み出すことができるかX モデムが必要です。それらのデバイスは、集積度が高く低消費 XX 電圧レギュレータ(LDO)のデカップリングがクリーンであるか否 電力でなければなりません。実装面積が小さく消費電力が少な かの検証XX いという2つの要件は、インダストリ4.0における基本的な前提 XX ADCの変調器とフィルタの性能が仕様に適合しているか否かの 条件です。 検証XXXXXXXXX
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3 インテリジェントなフィールド計測器――インダストリ4.0を見据えたスマートな設計 HARTでは、既存の電流ループを介したデジタル通信を実施す 力を供給するリニア・レギュレータが、そうした機能の一例で ることができます。その際、やり取りする信号をクリーンな す。PLCとの通信も可能なので、PLCの制御/監視を行うことが 電流信号に変調するために、HARTモデムが必要になります。 できます。「AD5421」は、HARTモデムとの相性が良いDACの 「AD5700」は、この目的のために開発された超低消費電力の 1つです。 HARTモデムです。 本稿で紹介したシグナル・チェーンは、インダストリ4.0に対応 最新のスマート・トランスミッタを支える最後の柱がDACで するフィールド計測器の設計例です。ループ受電に対応し、圧 す。これについても、インダストリ4.0を見据えて集積度を高 力や温度を測定するために使用できます。このスマート・トラ めることと、消費電力を削減することを念頭に置く必要があり ンスミッタは、特に、実装面積の縮小と消費電力の低減を重視 ます。DACは、回路全体の中でも主要なコンポーネントです。 して設計されています。よりスマートな監視、制御、フィード プリント回路基板の面積を抑えるために、できるだけ多くの機 バックに利用可能な回路となっています。使用されているアナ 能がDACに集積されます。スマート・トランスミッタ全体に電 ログ・デバイセズ製のIC群は、現在の課題と将来の新たな課題 に対応できます。 ADP162 ADG5433 AD5421 9V REGOUT 3.3V LDO 電圧レギュレータ AVDD DVDD 3.3V DVDD REGIN + VREF AD7124-4 電圧レギュレータ アナログ入力の VREFAIN0 シミュレーション AIN1 VLOOP ADC AIN2 温度センサー 4~20mAとHART オンボードの 温度センサー NTC VREF AIN3 DAC VBIAS COM ウォッチドッグ 50Ω センサー: ・タイマー 圧力 CINIEXC1 ∑-ΔPGA ADC LOOP (–) AIN4 – ADuM1441 I 1 AD5700 AIN5 exe I 2 HART REFexe マイクロコントローラ OUT1 RL78 SPI (ルネサス UART HARTモデム ADCIN REF(+) エレクトロニクス製) RREF REF(–) AGND DGND 低電圧の絶縁 J5-1 J5-2 J5-3 J5-4 J5-5 J5-6 4~20mAループ J5-7 のコネクタ J5-8 図3.Xスマート・トランスミッタの実装例。上はリファレンス回路の回路図、下はその外観です。 Mux 100kHz マイクロコントローラ、 HART、アイソレータ用の電源 SPI
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著者について オンライン・ Christoph Käemmerer(christoph.kaemmerer@analog. サポート・ com)は、2015年2月にアナログ・デバイセズ(ドイ コミュニティ ツ)に入社しました。2014年にドイツ エアランゲンにあ るフリードリヒ・アレクサンダー大学で物理学の修士号 アナログ・デバイセズのオンライン・サポート・コミュ を取得しました。同校を卒業後、リムリックにあるアナ ニティに参加すれば、各種の分野を専門とする技術者 ログ・デバイセズのプロセス開発部門でインターンとし との連携を図ることができます。難易度の高い設計上 て勤務しました。2016年12月に研修プログラムを修了 の問題について問い合わせを行ったり、FAQ を参照し し、現在はフィールド・アプリケーション・エンジニア たり、ディスカッションに参加したりすることが可能 として新たなアプリケーションに取り組んでいます。 です。 ez.analog.comXにアクセス *英語版技術記事はこちらよりご覧いただけます。 本    社 〒105-6891 東京都港区海岸1-16-1 ニューピア竹芝サウスタワービル10F 大阪営業所 〒532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原3-5-36 新大阪トラストタワー10F 名古屋営業所 〒451-6040 愛知県名古屋市西区牛島町6-1 名古屋ルーセントタワー40F ©2018 Analog Devices, Inc. All rights reserved. 本紙記載の商標および登録商標は、 各社の所有に属します。 Ahead of What’s Possible は アナログ・デバイセズの商標です。 www.analog.com/jp TA20552-0-9/18