1/4ページ
ダウンロード(3.5Mb)
1つの昇圧コントローラ機能と2つの降圧コントローラ機能を1つのパッケージで提供。トリプル出力の同期整流式 DC/DC コントローラ 「LTC7815」
製品カタログ
アイドリング・ストップ・システムを採用した車が搭載する多くの電子デバイスへの電力供給手段として最適
LTC7815は、バッテリ電圧を安全なレベルにまで昇圧する手段を提供します。
そのための昇圧コントローラが、2つの降圧コントローラと共に提供されるため、
アイドリング・ストップ・システムを採用した車が搭載する多くの電子デバイスへの電力供給手段として最適なソリューションです。
効率に優れる同期式の昇圧コンバータは、その後段に位置する2つの同期式降圧コンバータに電力を供給することを主な目的として設けられているので、同製品を使用すれば、自動車のバッテリ電圧が下がったときでも、各システムに適切な電圧を供給することができます。
これはアイドリング・ストップ・システムにとって、非常に有用な機能です。
また、バッテリからの入力電圧がプログラムされた出力電圧(昇圧によって生成する電圧)より高い場合、昇圧コントローラは100%のデューティ・サイクルで動作し、入力電圧をそのまま直接降圧コンバータに受け渡し、電力の損失を最小限に抑えます。
詳細はカタログをダウンロードしてご覧ください。
このカタログについて
ドキュメント名 | 1つの昇圧コントローラ機能と2つの降圧コントローラ機能を1つのパッケージで提供。トリプル出力の同期整流式 DC/DC コントローラ 「LTC7815」 |
---|---|
ドキュメント種別 | 製品カタログ |
ファイルサイズ | 3.5Mb |
登録カテゴリ | |
取り扱い企業 | アナログ・デバイセズ株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
この企業の関連カタログ
このカタログの内容
Page1
アイドリング・ストップ時における
インフォテインメント機器への給電
著者: Bruce Haug
Share on
背景 す。バッテリからの電圧を受け取るDC/DCコンバータが
従来から、自動車メーカーは、燃料の節約に有効なアイ 降圧型のものだけである場合、エンジンが再始動したと
ドリング・ストップ・システム(Star t /Stop Systems)に きにバッテリ電圧が5V以下に低下すると、入力電圧も5V
対して注力を続けています。アイドリング・ストップ・ 以下になって、それらのシステムはリセットされてしまう
システムでは、車が停止している間、エンジンをアイド ということです。エンジンが再始動するたびに、音楽プレ
ル状態にするのではなく、一旦停止させます。そして、 ーヤやナビゲーション・システムがリセットされるなどと
再び走行を開始する際、即座にエンジンを再始動させま いうことは、許容されるはずもありません。
す。停止と発進が何度も繰り返される場合、エンジンが
長時間にわたってアイドリングの状態になることが避け ソリューション
られ、排気ガスの量を削減し、燃料を節約することがで アナログ・デバイセズは、 P o w e r b y L i n e a r ®シリーズ
きます。これはシンプルな考え方に基づく機能です。例 の製品として、トリプル出力の D C / D Cコントローラ
えば、赤信号で停止しているときや、踏切で列車の通過 IC「LTC7815」を提供しています。LTC7815は、1つの
待ちで停止しているときに、エンジンを動かしたままに 昇圧コントローラ機能と2つの降圧コントローラ機能を
しておく必要はありません。エンジンを止めれば、エネ 1つのパッケージで提供する製品です。効率に優れる同
ルギーの無駄な消費を回避することができます。アイド 期式の昇圧コンバータは、その後段に位置する2つの同
リング・ストップ・システムを搭載した車両は、搭載し 期式降圧コンバータに電力を供給することを主な目的と
ない車両と比べて、市街地での走行という条件下で約8% して設けられています。このような構成になっているこ
の燃料を削減できるとされています。 とから、同製品を使用すれば、自動車のバッテリ電圧が
下がったときでも、各システムに適切な電圧を供給する
自動車の快適さや安全性は、アイドリング・ストップ・
ことができます。これはアイドリング・ストップ・シス
システムを適用したことによって損なわれるということ
テムにとって、非常に有用な機能です。また、バッテリ
はありません。アイドリング・ストップの機能は、エン
からの入力電圧がプログラムされた出力電圧(昇圧によ
ジンが最適な動作温度に達するまでアクティブにならな
って生成する電圧)より高い場合、昇圧コントローラは
いように設計されています。また、車内の温度がエアコ 1 0 0 %のデューティ・サイクルで動作します。つまり、
ンの設定値に達していなかったり、バッテリが十分に充
入力電圧をそのまま直接降圧コンバータに受け渡し、電
電されていなかったり、ドライバがハンドルを動かして
力の損失を最小限に抑えます。
いたりする場合にも、この機能は働きません。
図1に示したのは、LT C 7 8 1 5の実用回路例です。この回
アイドリング・ストップの機能は、スタータ用のモータ
路は、昇圧コンバータによって降圧コンバータに10Vを
ーやオルタネータ、関連するあらゆるセンサーからのデ
供給するケースに対応しています。昇圧コンバータは、
ータを監視する中央制御ユニットによって管理されま
それぞれ5V/7Aと3 .3V/10Aの出力を生成する2つの降圧
す。快適さと安全性のために必要だと判断されれば、同
コンバータに電力を供給します。それだけでなく、2Aの
制御ユニットは自動的にエンジンを再始動します。例え
電流を供給可能な第3の出力としても使用できます。この
ば、自動車が動き始めたり、バッテリの充電量が大幅に
回路は、入力電圧V が28V以下の場合、2.1MHzのスイッ
低下したり、フロントガラスに結露が生じたりすること IN
チング周波数での動作を維持します。入力電圧が28Vを超
があります。また、ほとんどのシステムは、一時停止と
えると、サイクル・スキップが発生します。
運転の終了の違いを認識します。ドライバのシートベル
トが外れていたり、ドアやトランクが開いていたりする LT C 7 8 1 5は、起動時には 4 . 5 V~ 3 8 Vの入力電圧で動作
と、エンジンは再始動されません。加えて、アイドリン し、起動後は2 .5Vという低い電圧で動作を継続します。
グ・ストップ機能は、(少なくとも現時点では)必要で 同期式昇圧コンバータの出力電圧は最高で60Vです。入
あればボタンを押すことによって完全に非アクティブ化 力電圧が十分に高く、効率を最大化できる場合には、同
することができます。 期式スイッチを完全にオンにして動作し、入力電圧をそ
12V のまま通過させることが可能です。2つの降圧コンバーただし、エンジンが再始動するときには、 のバッテリ
5V タの出力電圧は0 .8V~24Vで、システム全体として95%電圧が 以下に低下するといったことが起こり得ます。
の効率を達成します。最短のオン時間が45ナノ秒と短い
そのとき、稼働中のインフォテインメント・システムや
5V ことから、2 MHzのスイッチング周波数によって大幅な以上の電源電圧を必要とする電子デバイスは、リセッ
降圧にも対応できます。そのため、AMラジオのように重
トされてしまう可能性があります。ナビゲーション・シ
5V 要かつノイズに弱い周波数帯を避けることが可能です。ステムやインフォテインメント・システムの中には、
また、外付け部品としては小型のものを使用できます。
以上の入力電圧(電源電圧)を必要とするものがありま
Analog Dialogue 52-07 1
Page2
LTC7815は、Burst Mode ®という動作モードを備えていま たり10A以上の出力電流を供給することができます。この
す。このモードでは、無負荷での出力電圧を調整する際、 電流値は、外付け部品によってのみ制限されます。各コン
チャンネル当たりの自己消費電流を28μA(3チャンネルす バータの出力電流は、インダクタ(DCR)の両端の電圧
べてがオンのときは38μA)に削減することができます。 降下をモニタするか、あるいは別の検出抵抗を使用するこ
これは常時起動させておく必要があるシステムにおいて、 とによって測定します。LTC7815は固定周波数電流モー
バッテリの消耗を防ぐ上で有効な機能です。また、同 IC ドのアーキテクチャを採用しており、320kHz~2.25MHz
は、オン抵抗が1 .1ΩのNチャンネルのMOSFETに対応可 の範囲内で周波数を選択できます。あるいはそれと同じ
能なゲート・ドライバを内蔵しています。このドライバ 範囲にある外部クロックと同期をとることも可能です。
は、スイッチング損失を最小限に抑えつつ、チャンネル当
VOUT3
VINが10V以下の場合は 10Vに調整
VINが10V以上の場合は VINをそのまま出力 10µF
+ 68µF ×5 499kΩ VBIAS
VFB3
68.1kΩ TG1
0.33µH 3mΩ VOUT1
TG3 SW1 5V
V 3mΩ 0.16µH 7AIN
2.5V~38V SW3 LTC7815 BG1
(5V以上で起動)
µ BG3+ 220 F
SENSE1+
SENSE3 – SENSE1–
SENSE3 + VFB1
357kΩ C
INTV OUT110µF CC 68.1kΩ 47µF
×2 4.7µF ×2
BOOST1, 2, 3 EXTVCC VOUT1
0.1µF
SW1, 2, 3
TG2 0.33µH 3mΩ VOUT2
ITH1, 2, 3 SW2 3.3V
BG2 10A
SENSE2+
TRACK/SS1, 2 SENSE2–
0.1µF SS3 VFB2 210kΩ COUT2
68.1kΩ 33µF
RUN1 ×2
RUN2 100kΩ
RUN3 FREQ
PGND SGND
図1 . アイドリング・ストップ・アプリケーション用の回路図。
LT C 7 8 1 5は 2 . 1 M H zのスイッチング周波数で動作します。
スイッチ・ノードの電圧
VIN
VOUT
GND
出力電圧 Burst Mode時のリップル
VOUT
図 2 . B u r s t M o d eにおけるLT C 7 8 1 5の動作。
各ノードの電圧波形を概念図として示しました。
バッテリの稼働時間を延伸する トリーなどのシステムの電気回路や、常時オンのバス・
常時オンの電源バスを必要とするあらゆるシステムでは、 ラインを複数備える車載アプリケーションでは、自己消
不要な部分の電源はオフにして、バッテリのエネルギーを 費電流を抑えてバッテリのエネルギーを節約することが
浪費しないようにしなければなりません。一般に、そうし 特に重要です。そうしたシステムでは、スタンバイ・モ
た状態は、スリープ、スタンバイ、またはアイドル・モー ードにおける消費電流をできるだけ少なく抑える必要が
ドと呼ばれます。いずれにせよ、システムの自己消費電流 あります。自動車では、電子システムへの依存度が日に
を非常に少なく抑えることが求められます。テレマティ 日に増しています。そのため、バッテリの無駄な消費に
ックス、CD/DVDプレーヤ、リモート・キーレス・エン 対する圧力は高まり続けています。
2 Analog Dialogue 52-07
Page3
LT C 7 8 1 5では、昇圧コンバータと、1つの降圧コンバー 保護機能
タがオンになるスリープ・モードにおいて、消費電流は LTC7815は、DCR(インダクタの抵抗成分)または検出
28μAとなります。3つのチャンネルすべてがオンになる 抵抗を使用して、出力電流を測定するように構成できま
スリープ・モードでは、消費電流はわずか20μAとなりま す。2つの電流検出方式のうちどちらを選択するかは、
す。アイドル・モードでは、バッテリの稼働時間は大幅 主にコスト、消費電力、精度のトレード・オフによって
に延伸されます。これは、同 ICを高効率のBurs t Modeで 決まります。D C Rによる検出方法を選択すれば、高価
動作するように設定することで実現されます。LTC7815 な電流検出抵抗が不要になります。また、この方法は、
は、短時間のバーストの形で電流を出力コンデンサに供 特に大電流のアプリケーションにおいて、電力効率を高
給した後、出力コンデンサだけによって電力を負荷に供 められることが理由となって普及しつつあります。ただ
給するスリープ期間に入ります。図2は、この動作の概 し、検出抵抗を使用した方が、より高い精度で電流値を
念を示したタイミング図です。 測定できます。
スリープ・モードでは、即座に応答が必要な重要な回路 LTC7815が内蔵するコンパレータは、降圧コンバータの
以外の多くの内部回路がオフになります。出力電圧が低 出力電圧をモニタし、公称値よりも10%以上高くなると
くなりすぎると、スリープ信号がアクティブ化されると 過電圧の状態にあると判定します。この状態が検出された
共に、コントローラが上側の外付けMOSFETをオンに切 ら、上側のMOSFETはターン・オフし、下側のMOSFET
り替えて通常のBurs t Modeの動作が再開されます。ある はターン・オンします。この状態は、過電圧が解消され
いは、軽い負荷に電流を供給する際、強制的な連続モー るまで継続します。下側のM O S F E Tは、過電圧の状態
ドまたは固定周波数のパルス・スキップ・モードで動作 が続く限りオンのままになります。出力電圧が安全なレ
させたいとユーザが考えるケースがあります。どちらの ベルに戻ったら、自動的に通常の動作が再開されます。
モードにも容易に設定することができますが、自己消費
電流は増加します。 高温の状態に陥ったとき、または内部の消費電力によ
ってチップに過剰な自己発熱が引き起こされたときに
効率とサイズ は、LTC7815は内蔵するシャットダウン回路によってシ
1 5V ャットダウンされます。接合部温度が約1 7 0℃を超える図 の回路図のような使い方で を出力する場合、その
と、過熱に対する保護回路によって、バイアス用の内蔵
効率は約9 0 %となります(図3)。スイッチング周波数
2 .1MHz 300kHz 3% 4% LDO(低ドロップアウト)レギュレータがディスエーブを から に下げると、効率は ~ 向上
ルになります。それにより、バイアス電源を 0 Vまで下
します。
げ、実質的に正しい手順によってLTC7815の全体をシャ
ットダウンします。接合部温度が約1 5 5℃まで低下した
100 10k ら、LDOレギュレータはオンに戻ります。
VIN = 12V
90 VOUT1 = 5V
80 1k まとめ
70 自動車のアイドリング・ストップ・システムは、燃料の
60 100 節約に有効な機能であり、今後数年間にわたって進化し
続けることが予想されます。それにあたっては、最大5V
50
または5V以上を必要とするインフォテインメント・シス
40 10 テムやナビゲーション・システムへの電力供給に注意を
30 払うべきです。それらのシステムは、エンジンの再始動
f = 2.1MHz
20 1 によってバッテリ電圧が5V以下に低下するとリセットさ
Burst Modeによる動作 れる可能性があります。LTC7815は、バッテリ電圧を安10
Burst Mode時の損失 全なレベルにまで昇圧する手段を提供します。そのため
0 0.1
0.0001 0.001 0.01 0.1 1 10 の昇圧コントローラが、2つの降圧コントローラと共に
負荷電流〔A〕 提供されるということです。このような理由から、同 IC
は、アイドリング・ストップ・システムを採用した車が
図 3 . LT C 7 8 1 5の効率と、 搭載する多くの電子デバイスへの電力供給手段として最
他のコンバータ・セクションの負荷電流の関係 適なソリューションだと言えます。
図4に、LTC7815のデモ用ボード(図1に示した回路)の
外観を示しました。最も高い部品の高さは48mmです。
46mm
18mm
48mm 17mm
図 4 . LT C 7 8 1 5のデモ用ボード。
上側と下側のサイズを示しています。
Analog Dialogue 52-07 3
効率〔%〕
電力損失〔mW〕
Page4
Bruce Haug
Bruce Haug(bruce.haug@analog.com)は、1980 年にサンノゼ州立大学で
電気工学の学士号を取得しました。2006年4月に、製品マーケティング・
エンジニアとしてLinear Technology(現アナログ・デバイセズ)に入社し
ました。Cherokee International、Digital Power、Ford Aerospaceなどでの
勤務経験があります。私生活では、スポーツに熱心に取り組んでいます。
4 Analog Dialogue 52-07