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自動車メーカーにとって、前世代のものよりも安全で、スマー トで、燃費の良い車両を開発/製造するのは極めて重要なことです。
著者: Ken Waurin マーケティング・マネージャ Analog Devices, Inc.
自動車メーカーにとって、前世代のものよりも安全で、スマー トで、燃費の良い車両を開発/製造するのは極めて重要なことです。その目標を達成するために、車両にはより多くのECU (電子制御ユニット)が搭載されるようになりました。自動車 の新製品には、スマートな無線接続、ロード・ノイズ・キャン セリング(RNC:Road Noise Cancellation)、パーソナル・オ ーディオ・ゾーン(PAZ:Personal Audio Zone)、車内通信 (ICC:In-Car Communications)、自動運転といった新たな機 能が続々と実装されるようになります。それに伴って、電子シ ステムの数と複雑さが著しく増大するという状況にあるので す。ECUの数が増加すれば、各ECUに対する接続に必要なケー ブル・ハーネスの重量やコストも増加します。
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このカタログについて
ドキュメント名 | 【技術記事】オーディオ・システムのコスト削減に貢献する革新的なデジタル・バス・ アーキテクチャ |
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ドキュメント種別 | その他 |
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取り扱い企業 | アナログ・デバイセズ株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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技術記事
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オーディオ・システムのコスト削減に
貢献する革新的なデジタル・バス・
アーキテクチャ
著者: Ken Waurin
マーケティング・マネージャ
Analog Devices, Inc.
自動車メーカーにとって、前世代のものよりも安全で、スマー
トで、燃費の良い車両を開発/製造するのは極めて重要なこ
とです。その目標を達成するために、車両にはより多くのECU
(電子制御ユニット)が搭載されるようになりました。自動車
の新製品には、スマートな無線接続、ロード・ノイズ・キャン
セリング(RNC:Road Noise Cancellation)、パーソナル・オ
ーディオ・ゾーン(PAZ:Personal Audio Zone)、車内通信
(ICC:In-Car Communications)、自動運転といった新たな機
能が続々と実装されるようになります。それに伴って、電子シ
ステムの数と複雑さが著しく増大するという状況にあるので
す。ECUの数が増加すれば、各ECUに対する接続に必要なケー
ブル・ハーネスの重量やコストも増加します。もちろんコスト
も重要ですが、重量の増加は車両の燃費低下につながるため、
自動車メーカーを大いに悩ます問題になっています。
自動車メーカーは、先進的で機能が豊富なインフォテインメン 写真1. 複雑なケーブル・ハーネス
ト・システムを提供したいと考えています。その一方で、行政 ®
が課す燃費の規制に適合させることも必須の要件です。したが 最新世代のインフォテインメント・システムには、MOST
って、うまく両者のバランスをとらなければなりません。その (Media Oriented Systems Transport)やEthernet AVBといっ
ための手段の1つが、従来から使われているケーブル・ハーネス たデジタル・バス規格が広く使われています。アナログ方式
の重量を減らすことです。そうすれば、燃費を大幅に改善する の実装に伴う配線の複雑さが大いに緩和されるからです。実
ことができます。 際、MOSTやEthernet AVBを採用すると、性能と柔軟性が高ま
ります。その代わり、ソフトウェア・プロトコル・スタックを
現在の状況 管理するために高価なマイクロコントローラが必要になり、コ
従来、車載オーディオ・システムとECUの間の接続には、アナ ストは増加します。また、これらのデジタル・バス・アーキテ
ログのケーブル、または既存のデジタル・バス・アーキテクチ クチャは、本質的に非確定的なものです。つまり、ノードごと
ャが使われていました。いずれの方法にも制約があり、効率は に異なる値の遅延が発生します。アクティブ・ノイズ・キャン
低く、多くのコストが発生します。前者の方法の場合、車載オ セリング(ANC:Active Noise Cancellation)やRNC、ICCな
ーディオ・システムには、アナログ信号線またはチャンネルご ど、話声や音声を扱うことから遅延に敏感なアプリケーション
とに高価なシールド付きのケーブルが必要になります。今日の では、既存のデジタル・バス・アーキテクチャで生じるそうし
高性能なオーディオ・システムでは、マルチチャンネル(5.1ch た基本的な問題は許容できません。
または7.1ch)のDolbyまたはDTSのデコーディングをサポート アナログ・デバイセズのA2B
するために、必要なケーブルの数が急増することになります。
また、A/Dコンバータ(ADC)とD/Aコンバータ(DAC)が必 Automotive Audio Bus
®(A2B®)は、現実のアプリケーション
要になることから、トータルのシステム・コストも増加しま に対して最適化されたアナログ・デバイセズの革新的な技術で
す。更には、A/D変換、D/A変換に伴う誤差によって、オーディ す。これを使用すれば、Hi-Fiデジタル・オーディオを実現しつ
オ性能が低下する可能性もあります。 つ、ケーブル・ハーネスを最大で75%軽量化できることが実証
されています。
analog.com/jp
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2 オーディオ・システムのコスト削減に貢献する革新的なデジタル・バス・アーキテクチャ
オーディオ・アプリケーション向けに最適化されており、既 オーディオ・システム用のECU向けにローカルの電源を用意
存のデジタル・バス規格よりもはるかに少ないシステム・コ する必要がなくなります。その結果、トータルのシステム・
ストで、アナログのケーブルを使う場合よりも優れた音質を コストを更に抑えることが可能になります。
実現します。最もシンプルな構成の場合、A2Bは50Mbpsとい
う広い帯域幅のデジタル・バスとして機能します。2線式の
UTP(Unshielded Twisted Pair)ケーブルを1本使用すること
で、クロック、電源と共に、I2Sのオーディオ・データとI2Cの制
御データを、最大15mの距離のノード間や、40mにわたるデイ
ジー・チェーン全体で伝送することができます。
A2Bの基本
A2Bは、単一のマスター、複数のスレーブから成るライン型ト
ポロジとして実装されます。アナログ・デバイセズは、A2Bに
対応しつつ、機能を拡張したトランシーバー・ファミリの最新
製品「AD2428W」を提供しています。また、同ICとのピン互換
性を確保しつつ、機能を削減してコストを抑えた「AD2427W」 図1. A2B のデジタル配線
と「AD2426W」も同ファミリのラインアップに加えています。
これらの最新製品は、1つのマスター・ノードと最大10個のス A 2 B の バ ス 帯 域 幅 は 、 ト ー タ ル で 5 0 M b p s に 達 し ま す 。
レーブ・ノードで構成されるデイジー・チェーン接続をサポー そ れ に よ り 、 オ ー デ ィ オ 用 の 標 準 の サ ン プ ル ・ レ ー ト
トします。サポート可能なスレーブ・ノードの数は、第1世代の ( 4 4 . 1 k H z 、 4 8 k H z ) と チ ャ ン ネ ル 幅 ( 1 2 ビ ッ ト 、 1 6 ビ ッ
A2B対応トランシーバーと比較して20%増加しています。 ト 、 2 4 ビ ッ ト ) の 条 件 下 で 、 上 り と 下 り の そ れ ぞ れ で 最
個々のノード間を最大15mとして、最大40mまでのバス長に対 大 3 2 の オ ー デ ィ オ ・ チ ャ ン ネ ル を サ ポ ー ト し ま す 。 こ の
応可能です。また、リング型トポロジではなくライン型トポロ 仕 様 は 、 多 様 な オ ー デ ィ オ 用 I / O デ バ イ ス に 対 し て 多 大 な
ジを採用していることは、システム全体の完全性と堅牢性の面 柔 軟 性 と 接 続 性 を も た ら し ま す 。 オ ー デ ィ オ 用 E C U の 間
で非常に重要です。なぜなら、デイジー・チェーンの中の1つの を 完 全 に デ ジ タ ル 化 さ れ た オ ー デ ィ オ 用 シ グ ナ ル ・ チ ェ
接続に障害が生じたとしても、ネットワーク全体がダウンする ーンでつなぐことができるので、ADC/DACによる変換が不要に
ことはないからです。その障害の影響を受けるのは、障害の発 なります。そのため、変換誤差によってオーディオ品質が低下
生個所の下流に接続されているノードだけです。A2B技術に本 することはありません。
質的に組み込まれている診断機能により、障害の発生源を分離 先述したとおり、システム・レベルの診断機能はA2Bの重要な
し、是正処置を開始するための割り込み信号を発生させること 要素です。A2Bに対応するすべてのノードにおいて、断線、ワ
ができます。 イヤ同士の短絡、ワイヤの反転、電源やグラウンドへのワイヤ
上述したとおり、A2Bはマスタースレーブ形式のライン型トポ の短絡などが生じていれば、それを検出することができます。
ロジを採用しています。そのため、既存のデジタル・バス・ア この機能は、システムの完全性を確保する上で非常に重要な意
ーキテクチャと比べて本質的に効率が高いと言えます。バスを 味を持ちます。断線、ワイヤの短絡または反転といった障害が
検出するための簡単な処理が完了すれば、バスの通常動作を管 生じても、障害の発生個所よりも上流にあるA2Bのノードは問
理するためにプロセッサを使用する必要はありません。A2B固 題なく機能します。また、A2Bの診断機能では、システム・レ
有のアーキテクチャがもたらす付加価値として、システムにお ベルの障害を効率的に分離できるようにもなっています。これ
ける遅延が完全に確定的であるということが挙げられます。 は、販売業者や設置業者にとって非常に重要な機能です。
オーディオ・ノードがA2Bバス上のどこにあるのかにかかわら A 2B に 対 応 す る シ ス テ ム の 設 計 は 、 グ ラ フ ィ カ ル 開 発 環 境
ず、遅延は必ず2サイクル分になります。ANCやRNC、ICCなど 「SigmaStudioTM」を使用することで大幅に簡素化されます。
のアプリケーションでは、複数のリモート・センサーからのオ SigmaStudioは、オーディオ用プロセッサ「SigmaDSP®」
ーディオ・サンプルを、時間軸上で整合をとった上で処理しな やプロセッサ・ファミリー「SHARC®」もサポートしていま
ければなりません。このような話声や音声を扱うアプリケーシ す。SigmaStudioを使えば、業界で最先端の使いやすいツール
ョンにとって、この機能は極めて重要なものです。 群によって、A2Bに対応するネットワークを初期化し、すべて
AD2428W、AD2427W、AD2426Wを使用すれば、1本の2線式 のレジスタの構成(コンフィギュレーション)を行うことがで
UTPケーブル上で、オーディオ信号、制御信号、クロック、電 きます。A2Bバスの帯域幅を計算するツールや、BERT(ビット
源を配信できます。その結果、以下のような理由に基づいてト ・エラー・レート・テスト)用の機能も、SigmaStudioの環境
ータルのシステム・コストを抑制できます。 に含まれています。SigmaStudioは豊富な機能を備える多様な
評価システムを提供しています。それらを使用すれば、A2Bに
X 従来の実装と比べて物理的な配線の数が少なくなります。 対応するネットワークのプロトタイプを素早く開発し、システ
X 高価なシールド付きのケーブルではなく、低コストで軽量の ムの概念検証、テスト、検証、デバッグを円滑に進めることが
UTPケーブルを使用できます。 可能です。
X 最も重要な点として、A2Bでは、特定の用途に対してファン
タム電源機能を提供することができます。具体的には、A2B
に対応するデイジー・チェーン上のオーディオ・ノードに対
して、最大300mAの電流を供給可能です。この機能により、
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3 オーディオ・システムのコスト削減に貢献する革新的なデジタル・バス・アーキテクチャ
ターゲットとなる市場、アプリケーション RNC は、それよりも広義の ANC から派生したアプリケーショ
ンです。現在、多くの自動車メーカーによって研究が進められ
A2Bがもたらす効率の高さは、成熟した市場や新興市場の様々 ています。WB ANC では、リファレンス入力に調和するトーン
な用途にメリットをもたらします。A2Bのターゲットとなるア に加えて、調和しない一部のトーンやランダムなトーンをキャ
プリケーションとしては、次のようなものが挙げられます。 ンセルすることができます。通常、リファレンス入力は、車両
X オーディオ用ECU(ヘッド・ユニット、高級オーディオ・ア 内に物理的に分散された加速度センサー(4 ヵ所の車輪格納部
ンプ)の接続 に配置される場合が最も多い)によって供給されます。
X ハンズフリー、音声認識、ICC用のマイク・アレイ WB ANC 向けのシステムに対するその他の入力は、エラー・マ
X ANC、RNC イクから供給されます。エラー・マイクも車両内に物理的に分
散して配置され、各搭乗者のクワイエット・ゾーンごとに 1 つ
X PAZ/アクティブ・スピーカー ずつ必要になります。従来の実装では、各加速度センサー/マ
X eCallとテレマティクス・システム イクから WB ANC 用の処理ユニットまで、アナログ方式の専用
自動運転システム の接続方法が使用されていました。その方法には、処理ユニッX
トのコネクタ部分と配線のコスト/複雑さの面で明らかに問題
X 自動駐車システム があります。A2B を採用して実装すれば、そうしたすべての問
X バイタル・サインのモニタリング 題を解消できます。
X スマートな無線接続
A2Bは、費用対効果の高いセンサー接続を必要とする新たなア
量産車の中には、オーディオ用 ECU の接続に、既に A2B を採用 プリケーションを実現するための技術だと考えることもできま
しているものがあります。つまり、成熟した魅力的なアプリケー す。現在は、2020年以降の量産車への搭載を目指して、自動運
ション分野になっているということです。ヘッド・ユニットを 転機能、バイタル・サインのモニタリング技術、自動駐車シス
高性能のトランク・アンプに接続するシンプルなケースに A2B テムなどが開発されている状況にあります。それらのすべてに
を採用すれば、マルチチャンネルのオーディオ、カーナビ、スマー おいて、A2B技術がもたらす機能、能力、簡潔さといったメリ
トフォン、チャイムなどを接続するための個別の配線が不要に ットを活かすことができます。また、市場投入までにかかる期
なります。A2B では、それらすべての配線を 1 本の低コストの 間を短縮することが可能になります。
2 線式 UTP ケーブルに置き換えることができます。その構成に まとめ
より、最も厳しい車載 EMC/EMI(電磁両立性/電磁干渉)規格
の要件に適合することがテストによって確認されています。 A2Bは、新たなデジタル・バス・アーキテクチャです。多くの
配線を必要とするオーディオ/制御アプリケーション向けに、
マイクを接続するための効率的で費用対効果の高い方法につい 機能セット、性能レベル、システム・コストが最適化されてい
ては、様々なアプリケーションを設計する際に優先的に検討し ます。以下、本稿の要点をまとめます。
なければなりません。Bluetooth による接続やハンズフリー機
能、音声認識システムは、装備すべき標準的な機能になりつつ X A2Bを採用すれば、アナログ方式の接続を使用する場合より
あります。また、一部の地域では、eCall システムの装備が既 も優れたオーディオ品質が得られます。また、よりコストの
に義務付けられています。メーカーは(2 ~ 4 本の)マルチマ 高いデジタル・バス・アーキテクチャと同等のスケーラビリ
イク・システムの採用を進めています。個別に構成する場合で ティが実現されます。
も、モジュールとして構成する場合でも、A2B 技術を採用すれ X A2Bは、多様な車載アプリケーションに対する低リスクのソ
ば、アナログ方式の接続と比べてトータルのシステム・コスト リューションです。
を大幅に削減することができます。特に、マルチマイク・アレ
X A22 Bに基づくシステムは2016年から実用化されており、既にイを使用する場合には顕著な効果が得られます。1 つの A B 対 出荷数量は200万台を超えています。
応トランシーバーを使うことにより、最大 4 系統の PDM(Pulse
2
Density Modulation)入力マイクをサポートすることが可能で X アナログ・デバイセズは、機能性を向上したA B対応トラン
す。4 系統のマイク・アレイを使用する場合を例にとると、4 本 シーバーの最新製品として、AD2428Wを提供しています。
の配線のうち 3 本が不要になります。 また、それよりも機能を削減してコストを抑えたAD2427W
とAD2426Wも製品化しています。集積度と性能のさらなる
向上を目指した製品の開発も予定しています。
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著者について オンライン・
Ken Waurin(kenneth.waurin@analog.com)は、アナ サポート・
ログ・デバイセズで車載インフォテインメント・システ コミュニティ
ムを担当する戦略マーケティング・マネージャです。主
に、高性能のオーディオ、アクティブ・ノイズ・キャン アナログ・デバイセズのオンライン・サポート・コミュ
セリング、ネットワーク接続といった技術を扱っていま ニティに参加すれば、各種の分野を専門とする技術者
す。 との連携を図ることができます。難易度の高い設計上の問題について問い合わせを行ったり、FAQ を参照し
たり、ディスカッションに参加したりすることが可能
です。
ez.analog.com にアクセス
*英語版技術記事はこちらよりご覧いただけます。
本 社 〒105-6891 東京都港区海岸1-16-1 ニューピア竹芝サウスタワービル10F
大阪営業所 〒532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原3-5-36 新大阪トラストタワー10F
名古屋営業所 〒451-6040 愛知県名古屋市西区牛島町6-1 名古屋ルーセントタワー40F
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