【アプリケーションノート】目詰まりしないオンラインTOC計 | バイオテクターによる最適な工場排水モニタリング <ハック・ウルトラ>

製 品 紹 介 L1908-13 目詰まりしないオンラインTOC計 BioTectorによる最適な工場排水モニタリング ㈱ハック・ウルトラ　岡田　政嗣・佐々木　信也 はじめに：概要 量のトレンドを評価できるオンライン 記述がある。TOCは10分以内の間隔で 企業の工場排水の管理には数多くの 分析の利用が増えている。 連続測定を行えるため、排水処理プロ 分析装置が利用されている。水質汚濁 工場排水の有機物測定には、一般的 セスの様々な段階でTOCを利用するこ 防止法では工場・事業場の排水に対し に公定法の生化学的酸素要求量（BOD) とが有効と考えられている(4)。事前に て基準が定められ、年々厳しい排水管 や化学的酸素要求量（COD）が利用さ BOD値やCOD値との相関係数を調べ 理が求められていることは周知されて れている。しかしながら、BOD測定は ておくことでBOD測定やCOD測定を いる。特に、東京湾、伊勢湾、瀬戸内 ５～７日を要すること、利用する微生 置き換えることもできる(5)。 海等の沿岸に位置する事業者には総量 物の種類や量やサンプルの流量に大き 規制が実施されている。本稿では、工 く依存し、推測が極めて難しいために 排水の監視に有効な 場排水のオンライン分析で利用するた 連続測定に不向きである(1)。COD測定 BioTector めのTOC（全有機炭素）計Hach社製 も１～２時間を要するために有効なオ BioTectorは、排水や工業用水向けの BioTector (バイオテクター、以下Bio- ンライン分析法とは言い難い。また､ オンラインTOC計である。表１に示す Tector）の有用性を考える。TOC測定 一部の無機化合物（亜硝酸塩や塩化物) 通り1 mg/L未満から1,000 mg/Lまで と基本原理について説明し、そのなか が含まれる場合にCOD測定値が不安定 のTOC測定ができるスタンダードモデ でBioTectorの特長を紹介する。さら になることや、UV計によるCOD測定 ルB3500シリーズ、最大20,000 mg/L に、BioTectorの利用例を挙げ効果的 では、工場の製造品目により廃水され のレンジに対応して同時６流路までの な排水管理を提案する。 る化合物のCOD値が正確に測定されな 幅広いTOC測定ができるB7000iと豊 いことがある(2)。それに対して、有機 富なラインナップがあり、１台でTOC 排水管理における 物の含有量を測定する全有機炭素 測定と全窒素（TN）と全リン（TP) オンラインTOC測定の (TOC）が利用されるようになってい も同時測定ができるB7000もある。全 効果 る。TOCとはTotal Organic Carbon てのモデルで５分～８分の連続測定が 工場の排水処理プロセスを正しく制 の略で、日本語では全有機炭素と表記 可能であり、TOC測定値の閾値設定な 御するために、工場内の複数ポイント され、水中の有機物の総量を有機炭素 どにより警報通知を行う監視機能があ で正確に排水を測定する必要がある｡ の量で示したものであり、有機物によ る。BioTectorは、排水のオンライン 昨今の企業では様々な分析手法で工場 る水の汚濁を判定する代表的な指標の 測定で企業がこれまで直面していた課 排水の測定が行われている。地域自治 一つである。TOCは有機物の量を直接 題を改善する技術を多く備えている｡ 体などへ排水中の分析項目の測定結果 に測るのではなく、有機物を分解して､ ここではBioTectorのユニーク、かつ､ を報告するための手分析法が広く利用 そこに含まれる炭素量Cを測定してい 排水の監視に優れた特長を紹介する。 されている。簡便で安価に実施できる る。JIS K 0102「工場排水試験方法｣ (1) 湿式二段階酸化方式による 利点があるが、手分析の結果のみでは によると、｢水中に存在する有機物中の 高い酸化力 サンプリング時の測定以外で発生する 炭素の量をいう」と定義され、排水中 湿式二段階酸化方式とは、BioTector 急激な化合物の上昇を検知できず、排 の有機性汚濁の程度を表す一つの指標 が特許取得しているTOC測定方式であ 水管理方法として不十分であり、監査 として提唱されている(3)。工場排水試 る。湿式酸化方式のTOC計はこれまで リスクも認識されていた。昨今は、自 験方法以外でも、厚生労働省が定める 測定精度が高くメンテナンス性の良い 社の排水の常時監視だけでなく、排水 水道水質検査にTOCによる試験方法の ことで知られていたが、酸化力が劣る クリーンテクノロジー　2019. 11. 69

製 品 紹 介 表１　 スを生成し放出する。オゾンはマンガ TOC計 TOC/TN/TP計 ンを酸化してMn7＋とし、Mn7＋が触媒 BioTectorモデル B3500ul B3500c B3500e B7000i B7000 として作用しシュウ酸イオンを酸化分 TOC測定レンジ 0～5ppm 0～100ppm 0～1,000ppm 0～20,000ppm 0～20,000ppm 解して炭酸ガスを生成して放出する｡ 6(TOC/TN) 最大流路数 1 2 1 6 放出された炭酸ガス（CO ）がNDIR2 3(TP) 検出器でTOC値として測定される。 測定時間 ５分～ 5.5分～ 7.5分～ 6.5分～ ７分～ (2) 目詰まりしないTOC計 粒径 100 μm 100 μm 100 μm 2 mm 2 mm 排水用のTOC計を利用した方々は経 3.2 mmチューブ o o o o o 験があると思われるが、燃焼酸化方式 セルフクリーニング － － o o O の排水用オンラインTOC計の最大の課 最大塩分濃度 － － 4％ 30％ 30％ 題は、運転開始後に起きる排水の汚れ 点検・校正 ６ヶ月 ６ヶ月 ６ヶ月 ６ヶ月 ６ヶ月 や浮遊物（SS)、高濃度の塩分やカル シウムが原因で起きる装置のチューブ､ ポンプや前処理装置の目詰まりと頻発 する故障である。装置担当者は、日々 の増え続けるチューブやポンプの洗浄 作業、燃焼管の洗浄と触媒交換作業､ 同時に発生する校正作業などのメンテ ナンス作業負担とコスト増に追われて いる。これらの問題に直面している企 業にとって、BioTectorは従来のメン テナンス負担やコストの問題を解決し てくれるTOC計である。BioTectorは 目詰まりしないTOC計である。それを 実現する特長を紹介する。 (2-1) セルフクリーニング BioTectorには、TOC測定毎にチュ ーブ内部を洗浄するセルフクリーニン グ機能がある。湿式二段階酸化方式の プロセス中に生成される酸廃液はポッ ために排水のTOC測定には不向きと考 ガスとして放出し、放出された炭酸ガ トに移送保管され、排水サンプルの えられてきた。BioTectorの湿式二段 ス（CO ）がNDIR検出器でTIC値とし 2 TOC測定が終了した後にこの酸廃液を 階酸化方式は、湿式酸化方式の優れた て測定される。 サンプリングラインに戻すことでチュ 特長を持ちながら、従来から利用され (1-2) TOC測定～第一段階～ ーブ内部の洗浄を行っている。この機 ている燃焼酸化方式TOC計と遜色ない アルカリ試薬によりpH値を13以上 能により粘度の高い油脂類、バクテリ 酸化能力を実現したTOC計である。こ に上げてオゾンを注入し、オゾンと水 ア類、塩類でさえも常に洗浄殺菌され､ れにより工場内の高いTOC値が検出さ 酸基が反応しヒドロキシルラジカル キャリーオーバーを防ぐことができる｡ れるような複数ポイントでも正確に測 (OH－）が生成される。ヒドロキシラ また、BioTectorは湿式酸化方式の 定することができる。BioTectorの湿 ジカルにより、炭素（C)、窒素（N)､ TOC計であるために燃焼管を利用しな 式二段階酸化方式の測定原理は次の通 リン（P）他の有機物が酸化され、炭 いこともメンテナンス作業負担や故障 りである。 酸イオン、シュウ酸イオンへと分解さ リスクを軽減している。装置担当者は､ (1-1) T IC除去 れる。 毎日のように実施していた燃焼管やチ 酸試薬によりpH値を１以下にし、サ (1-3) TOC測定～第二段階～ ューブ、ポンプなどのメンテナンスか ンプル中の炭酸塩、重炭酸塩等の無機 酸試薬により再びpH値を２以下に下 ら解放される。 性炭素含有化合物を酸と反応させ炭酸 げ、酸と炭酸イオンとの反応で炭酸ガ 70 クリーンテクノロジー　2019. 11.

製 品 紹 介 (2-2) 希釈処理不要の 現している。これから排水のTOC測定 法で発生していた試験工数やコスト改 チューブを採用 を検討頂く方のために、BioTectorが 善に貢献している。BioTectorを放流 BioTectorの全てのモデルで内径3.2 有効に利用されている三つの利用例を 前の排水モニタリングで利用する導入 mmのサンプルチューブとチューブポ 紹介する。 例は数多くある。 ンプを採用している。このチューブを (1) 工場のプラント棟から直接に (3) 工場の冷却水や洗浄水などを 利用することで目詰まりが起きにくい 出される上位廃水の 再利用する利用事例 構造になっており、排水サンプル中の TOCモニタリング利用事例 多くの企業で工業用水が増加してい 直径2 mmまでの粒子は希釈不要で取 これは産業廃水の測定割合が高い排 るなかで、環境対策として取り組んで り込むことができる※。BioTectorのサ 水処理プラントにおいて、予め設定し いる節水対策に貢献することができる｡ ンプルチューブと一般的なTOC計のサ た閾値を越えた際の警報機能と連携し､ また、近年は冷却水に海水を利用して ンプルチューブを比較して頂くとその 監視システムとして重要な役割を果た いる工場が増えているが、これまでの 差は一目瞭然である。 す。また、適切な薬品量を投入するこ 燃焼酸化方式TOC計では、このような BioTectorはこれらの特長により年間 とで排水処理時の負荷軽減や薬品コス 塩を含むサンプル水の測定を行うと､ 稼働率99%以上を実現している。Bio- トの削減に貢献することができている｡ 燃焼管に塩が付着することで起きる Tectorを利用する企業は６ヶ月毎の定 上位廃水のTOC測定では、脂肪、粒子､ TOC値の再現性の低下、故障やメンテ 期点検作業のみ計画的に実施すればよ 塩、繊維などが含まれた排水原水の ナンス負担が発生して不向きであった｡ い。これまで毎日のように費やされて TOC測定を行うために堅牢かつ長期安 それに対して、BioTectorは海水など きたメンテナンス時間や作業の手間か 定稼働できるTOC計が必要となる｡ 高濃度の塩を含むサンプル水のTOC測 ら解放されるだけでなく、メンテナン BioTectorのセルフクリーニング機能 定に強いため冷却水の再利用に有効で ス作業毎に発生するTOC測定のダウン やサンプルチューブの口径が特に効果 ある。表２はB7000iがNaClの濃度を タイムを無くすことができる。 を発揮する利用例である。 振り分けて様々な標準液を測定したこ (2) 河川や下水放流前の排水の とを示しているので参考にされたい｡ TOCモニタリング利用事例 これもBioTectorのセルフクリーニン 従来のBODやCODの手分析法からの グ機能が効果を発揮される利用例であ 切り替え、または、手分析法を補完す る。 る役割として利用されている。BODや CODは一時的に行う試験としては有用 おわりに：まとめ であるが、サンプリングや前処理作業 本稿では、工場排水におけるオンラ などに時間がかかる。これらを分析機 インTOC測定の有効性とBioTectorの 関に委託することもできるがコスト負 湿式二段階酸化方式の特長を説明した｡ 担も大きい。メンテナンス負担少ない 特に、BioTectorは目詰まりしないオ BioTectorを利用することは、手分析 ンラインTOC計として、これまで装置 表２　 TOC回収率（％) NaCl濃度 エチレン BioTectorによる排水 酢酸 KHP メタノール (％ w/v) ジアミン モニタリングの利用例 0 100.4 101.4 100.9 101.4 ここまでBioTectorのオンラインTOC 1 100.3 101.1 100.8 100.9 測定に優れた特長を紹介したが、既に 3 100.5 101.6 100.6 100.8 多くの国内外の企業がBioTectorを利 5 99.8 101.5 100.4 100.5 用した排水管理や工業水の再利用を実 10 99.7 100.4 100.3 101.4 15 99.5 99.5 100.6 100.9 20 100 99.9 100.8 100.8 ※：B7000i、B7000が該当、その他モデルは直径 26 100.2 100 100.9 100.7 100 μmまでの粒子に対応 クリーンテクノロジー　2019. 11. 71

製 品 紹 介 担当者が抱えていた排水計器に対する https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%9F%E7 (9) Hach TOC Online Analytics－Protecting the %89%A9%E5%8C%96%E5%AD%A6%E7%9A%8 Environment and the Plant メンテナンス作業負担やコスト負担を 4%E9%85%B8%E7%B4%A0%E8%A6%81%E6%B (10) Hach Lost Product Detection and Prevention 改善できることを紹介した。BioTector 1%82%E9%87%8F Using TOC Monitoring of Wastewater の特長を活かした利用例では、工場プ (2) 斉藤巌・伊藤洋二・玉川尊：BODとCODの測定 (11) Hach TOC Monitoring of Effluent Water in 値の比較について昭和47年度技術研究発表会､ Wastewater Treatment Plants to Ensure Water ラント上位廃水のTOC測定による監視 pp.682-689（1973) Quality システムの例、河川や下水放流前の工 (3) 日本電気計測工業会（2019）TOC 計測器 (12) Hach BioTector TOC Analyzer for High Salt 場排水のTOC測定の例、海水を利用し https://www.jemima.or.jp/tech/5-02-05.html Applications (4) ハック・ウルトラ (13) 岡田政嗣・佐々木信也：ラボ用TOC測定の自動 た冷却水や工業用水のTOC測定による https://jp.hach.com/toc/family?productCategor 化とデータインテグリティ－対応の最新技術、GMP 再利用の例など、BioTectorが様々な yId=51492531445 Platform（2019) 場所で有効に利用されていることを紹 (5) 田平泰広・久保隆・川口聡：大学排水（長崎大 学）のBOD管理におけるTOC測定の有用性、環境 介した。排水管理におけるTOC測定の と安全 3 2 (2012) 有効性は既に評価されているが、今後 (6) 環境省：平成29年度水質汚濁防止法等の施行状 はその具体的な利用方法や効果の認知 況（2019) (7) 環境省：化学的酸素要求量、窒素含有量及びり が重要であると考えている。 ん含有量に係る総量削減基本方針 筆者紹介 (8) 全有機炭素 ウィキペディア（Wikipedia） 参考文献 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%A8%E 岡田政嗣・佐々木信也 (1) 生物化学的酸素要求量　ウィキペディア（Wiki- 6%9C%89%E6%A9%9F%E7%82%AD%E7%B4 ㈱ハック・ウルトラ　営業 pedia) %A0 72 クリーンテクノロジー　2019. 11. PDF作成用）記事中30・50修正-0302・0310・0507・0508提出分-■修_0619.indd 11 2017/06/19 14:15:24 技術の挑戦者-43.indd 1 2018/12/13 11:47:56 ちよき　超音波フェーズドアレイ技術_43mm 基礎編 190417.indd 1 2019/04/17 19:48:33